カスタマーサポート準備編
vol.01 定義・総論編
カスタマーサポートの問い合わせを効率化するための方法のひとつが「ユーザーの自己解決を促す」ことです。ユーザーが疑問を自分で解決できれば問い合わせが減り、その分のリソースを商品開発に充てられます。ユーザーの自己解決を促進する際は「顧客満足度を下げないこと」「サイレントカスタマーがいること」に注意する必要があります。
できれば効率化したいカスタマーサポートへの問い合わせ。
「どうやって減らすのが効果的なのか」「何から始めるべきなのか」などお困りの点はありませんか?
そこで、今回は「ユーザーの自己解決を促す目的」や「施策を検討するときの注意点」についてお伝えしていきます。
- 本末転倒な目標設定で、自社の評判がどんどん悪くなる
- サイレントカスタマーへの対応を誤り、悪評を撒かれる
なんてことを防ぐためにも、関連部署の方に読んでいただければ幸いです。
今回は、「そもそも自己解決とは何か」について紹介をしたあとに、問い合わせを「減らしてはいけない」パターンなどに触れつつ、「どのようなことに注意して施策を検討すればいいか」をご紹介します。
そもそも「自己解決」とは?
まず、自己解決とは何か。
今回は「有人サポートに頼らず、ユーザーが自分自身で解決すること」と定義します。例えば「サポートサイト・FAQ・チャットボット・マニュアル」など、用意された解決手段を用いて自分自身で解決することです。
参考:有人サポートとは例えば、「コール(電話)・有人チャット・お問い合わせフォーム(メール)・LINE・質問コミュニティ」など、誰かに相談してサポートを受ける手段です。
さて、この「自己解決」がどんどん重要になってきています。それはなぜか。
自己解決の効率化が、サービスの開発力に大きく影響するため。
自己解決が重要な理由。
それは「サポートコストの圧縮がサービスの開発力を高める」ためです。ユーザーの自己解決によって問い合わせ対応に関わる稼働を圧縮できれば、浮いたリソースは商品の開発に充てられますよね。
すると、
- サービスに使っている機材やサーバーなどインフラを改善できれば、ユーザーの利便性が向上する
- 電話対応が減った分の時間を商品手配の作業に充てれば、ユーザーに届くまでのスピードが上がる
コストの削減ができれば、このように様々な改善ができます。
スペックやサポートなどが改善すること。それはサービスの競争性が高まり、受注率アップへの貢献などが考えられます。また、サービス改善で顧客満足度が上がることは、解約率の低下、すなわちLTVの改善にも貢献するといえます。
言い換えると、無用な問い合わせを減らして自己解決を促すことは、単純な「コスト削減」ではなく、その先の「サービスの優位性」につながり、サービスの優位性は「受注率、継続率のアップ」につながるということです。
では「自己解決を促進しよう」と思った企業はどうしていくべきか。
いきなり施策に入る前に注意してほしい部分があります。
「自己解決」施策を検討するときの注意点
自己解決を促進するときに特に注意するべきは、以下の2点です。
- 自己解決=問い合わせ削減「ではない」こと
- 問い合わせを行わずに静かに離脱するサイレントカスタマーがいること
①自己解決=問い合わせ削減「ではない」
まず「自己解決=問い合わせ削減」という、単純な図式ではないことに注意してください。
「問い合わせ削減」ばかりを目的にすると、間違った方向に進みかねません。例えば、「サポートサイトの中で、電話番号をなかなか見つからない深いところに隠す」ということも実際には行われてます。
本来は電話での問い合わせが必要だったユーザーの満足度の低下は、どれほどのものでしょうか。
「深い階層に隠す」まではいかずとも、問い合わせ削減を意識しすぎて、ユーザーに不適切な案内をしてしまうパターンもあります。
例えば、サポートサイトのトップページにチャットボットを設置し、利用者全員にチャットボットの利用を促す企業がありました。しかし、結局はチャットボットでは案内ができず、電話での問い合わせが必要な場合も多いものでした。ユーザーからすれば「チャットボットで色々と調べたのに、その結果が電話してください。」だとイライラが高まります。
「電話が必須なら、最初からそう案内して欲しい」という真っ当なクレームも発生していました。
減らすべき問い合わせは「本来は問い合わせが不要だった問い合わせ」です。つまり、お客様が自分で解決できたはずの問い合わせです。
問い合わせをせずとも、自己解決できるものは自分で対応できるように情報を整える。「問い合わせ削減」は、あくまでそういった施策の結果のはずです。単純に問い合わせ数の減少を数値目標にすることは避けてください。上述のようにクレームを引き起こします。
そしてクレームは厳しいものですが、一方でユーザーから連絡さえもらえれば電話口などでフォローのしようもあります。ここで注意したいのがもう一つのポイントである「サイレントカスタマー」の存在です。
②問い合わせを行わずに静かに離脱するサイレントカスタマーがいること
ここまで「問い合わせをされた場合」を前提として話をしてきましたが、実際はほとんどの場合は問い合わせをしてくれません。調査※によれば、カスタマーサポートにくる問い合わせの割合は「4%」ほど。つまり、96%のお困りごとは放置されているということです。
「FAQを軽く調べてみたものの、よくわからない。しかし、わざわざ問い合わせをすることも面倒。なので、購入をやめる。はたまた解約する。」こういったユーザーは意外なまでに多くいます。
これらの「静かに離脱するユーザー」をサイレントカスタマーと呼びます。
ここで恐ろしいのは、企業側が何が原因かもわからず、お客様が離反していっているということです。直接クレームが来ずにSNSなどで悪評を書かれる場合もあり、炎上も起こりかねません。その悪評もWebの場合は一度書かれると多くの場合は残るので、長期にわたるブランド棄損を引き起こす可能性があります。
おわりに
今回は自己解決とは何か。注意点は何か。など、施策を検討する前の準備的な内容をご紹介してきました。次回は、「結局、自己解決には何が必要なのか」について事例を挙げながら紹介する予定です。