Vol.01
自己解決を加速させるカスタマーサポートとは?
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Chapter
1

カスタマーサポート準備編

11

vol.01 定義・総論編

#自己解決
#カスタマーサポート
#効率化
#エフォートレス

カスタマーサポートの問い合わせを効率化するための方法のひとつが「ユーザーの自己解決を促す」ことです。ユーザーが疑問を自分で解決できれば問い合わせが減り、その分のリソースを商品開発に充てられます。ユーザーの自己解決を促進する際は「顧客満足度を下げないこと」「サイレントカスタマーがいること」に注意する必要があります。

できれば効率化したいカスタマーサポートへの問い合わせ。

「どうやって減らすのが効果的なのか」「何から始めるべきなのか」などお困りの点はありませんか?

そこで、今回は「ユーザーの自己解決を促す目的」や「施策を検討するときの注意点」についてお伝えしていきます。

  • 本末転倒な目標設定で、自社の評判がどんどん悪くなる
  • サイレントカスタマーへの対応を誤り、悪評を撒かれる

なんてことを防ぐためにも、関連部署の方に読んでいただければ幸いです。

今回は、「そもそも自己解決とは何か」について紹介をしたあとに、問い合わせを「減らしてはいけない」パターンなどに触れつつ、「どのようなことに注意して施策を検討すればいいか」をご紹介します。

そもそも「自己解決」とは?

まず、自己解決とは何か。

今回は「有人サポートに頼らず、ユーザーが自分自身で解決すること」と定義します。

例えば「サポートサイト・FAQ・チャットボット・マニュアル」など、用意された解決手段を用いて自分自身で解決することです。

参考:有人サポートとは例えば、「コール(電話)・有人チャット・お問い合わせフォーム(メール)・LINE・質問コミュニティ」など、誰かに相談してサポートを受ける手段です。

さて、この「自己解決」がどんどん重要になってきています。それはなぜか。

自己解決の効率化が、サービスの開発力に大きく影響するため。

自己解決が重要な理由。

それは「サポートコストの圧縮がサービスの開発力を高める」ためです。

ユーザーの自己解決によって問い合わせ対応に関わる稼働を圧縮できれば、浮いたリソースは商品の開発に充てられますよね。

すると、

  • サービスに使っている機材やサーバーなどインフラを改善できれば、ユーザーの利便性が向上する
  • 電話対応が減った分の時間を商品手配の作業に充てれば、ユーザーに届くまでのスピードが上がる

コストの削減ができれば、このように様々な改善ができます。

スペックやサポートなどが改善すること。それはサービスの競争性が高まり、受注率アップへの貢献などが考えられます。また、サービス改善で顧客満足度が上がることは、解約率の低下、すなわちLTVの改善にも貢献するといえます。

言い換えると、無用な問い合わせを減らして自己解決を促すことは、単純な「コスト削減」ではなく、その先の「サービスの優位性」につながり、サービスの優位性は「受注率、継続率のアップ」につながるということです。

では「自己解決を促進しよう」と思った企業はどうしていくべきか。

いきなり施策に入る前に注意してほしい部分があります。

「自己解決」施策を検討するときの注意点

自己解決を促進するときに特に注意するべきは、以下の2点です。

  1. 自己解決=問い合わせ削減「ではない」こと
  2. 問い合わせを行わずに静かに離脱するサイレントカスタマーがいること

①自己解決=問い合わせ削減「ではない」

まず「自己解決=問い合わせ削減」という、単純な図式ではないことに注意してください。

「問い合わせ削減」ばかりを目的にすると、間違った方向に進みかねません。例えば、「サポートサイトの中で、電話番号をなかなか見つからない深いところに隠す」ということも実際には行われてます。

本来は電話での問い合わせが必要だったユーザーの満足度の低下は、どれほどのものでしょうか。

「深い階層に隠す」まではいかずとも、問い合わせ削減を意識しすぎて、ユーザーに不適切な案内をしてしまうパターンもあります。

例えば、サポートサイトのトップページにチャットボットを設置し、利用者全員にチャットボットの利用を促す企業がありました。しかし、結局はチャットボットでは案内ができず、電話での問い合わせが必要な場合も多いものでした。ユーザーからすれば「チャットボットで色々と調べたのに、その結果が電話してください。」だとイライラが高まります。

「電話が必須なら、最初からそう案内して欲しい」という真っ当なクレームも発生していました。

減らすべき問い合わせは「本来は問い合わせが不要だった問い合わせ」です。つまり、お客様が自分で解決できたはずの問い合わせです。

問い合わせをせずとも、自己解決できるものは自分で対応できるように情報を整える。

「問い合わせ削減」は、あくまでそういった施策の結果のはずです。

単純に問い合わせ数の減少を数値目標にすることは避けてください。上述のようにクレームを引き起こします。

そしてクレームは厳しいものですが、一方でユーザーから連絡さえもらえれば電話口などでフォローのしようもあります。

ここで注意したいのがもう一つのポイントである「サイレントカスタマー」の存在です。

②問い合わせを行わずに静かに離脱するサイレントカスタマーがいること

ここまで「問い合わせをされた場合」を前提として話をしてきましたが、実際はほとんどの場合は問い合わせをしてくれません。調査※によれば、カスタマーサポートにくる問い合わせの割合は「4%」ほど。つまり、96%のお困りごとは放置されているということです。

※顧客ロイヤルティ協会・佐藤知恭 「Goodmanの法則ーグッドマンの法則ー」 から抜粋 http://www.customer-loyalty.jp/goodman.html

「FAQを軽く調べてみたものの、よくわからない。しかし、わざわざ問い合わせをすることも面倒。なので、購入をやめる。はたまた解約する。」こういったユーザーは意外なまでに多くいます。

これらの「静かに離脱するユーザー」をサイレントカスタマーと呼びます。

ここで恐ろしいのは、企業側が何が原因かもわからず、お客様が離反していっているということです。直接クレームが来ずにSNSなどで悪評を書かれる場合もあり、炎上も起こりかねません。その悪評もWebの場合は一度書かれると多くの場合は残るので、長期にわたるブランド棄損を引き起こす可能性があります。

おわりに

今回は自己解決とは何か。注意点は何か。など、施策を検討する前の準備的な内容をご紹介してきました。次回は、「結局、自己解決には何が必要なのか」について事例を挙げながら紹介する予定です。

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vol.02 簡易事例編
#WEBサポート
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#自己解決
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カスタマーサポート準備編

12

vol.02 簡易事例編

#WEBサポート
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#エフォートレス
#カスタマーサポート

お客様の自己解決を促し、カスタマーサポートへの問い合わせを減らすためには「正しい情報が整理されたサポートコンテンツ」が欠かせません。サポートコンテンツを作成する上で重要なポイントは「網羅性」と「回遊性」の2つ。ユーザーが必要な情報を必要なタイミングで提示できれば、ユーザーの満足度を損なわずに自己解決へと導けます。

「カスタマーサポートへの問い合わせを効率化するために、お客様の自己解決を促す」

間違えた考え方ではありませんが、実際に施策を打つと「顧客満足度の低下を招く」「お客様の離反につながる」という結果になってしまう恐れがあります。

そこで、今回は「お客様の自己解決を適切に促すために何が必要か」についてお伝えしていきます。

自己解決を促すことで、お客様が必要な情報を必要なときに得られ、カスタマーサポートへの問い合わせを減らせるよう、参考にしていただければ幸いです。

自己解決には何が必要?

自己解決に重要なのは「問い合わせを行わずとも満足できる、サポートコンテンツを作ること」そして「問い合わせに至らなかったユーザーの情報を知ること」です。
これらは当たり前のようでいて、やりきるのは非常に難しい部分といえます。

まずは大元となる「 正しい情報が整理された説明コンテンツ」が必要です。ユーザーの使われ方に即した形でFAQやマイページを準備しましょう。(詳細については、今後具体的にお伝えしていきます。)

今回、お伝えしたいポイントはサポートコンテンツ制作時に「網羅性(情報が十分足りているか)」と「回遊性(ほしい情報に辿り着きやすいか)」を意識できているかということです。

「網羅性(情報が十分足りているか)」

当たり前ですが情報が不足していてはいけません。

では、その「不足」はどうやって気付くのでしょうか?多くの場合は「問い合わせがくる」=情報が足りていないと判断し、問い合わせがくるたびに情報を追記することだと思います。

しかし、前述の通り「サイレントカスタマー」がたくさん存在していると考えると、「何がわからないのかわからない」状況ともいえそうです。

そこでおすすめな施策は「ユーザー体験を行うこと」です。

自分自身がユーザーになりきって、申し込み手続きなどを実施してみる。例えば「Web申し込みをする」という行動をしてみる。そのときのサポート内容や情報に対して、どういう気持ちになったかを書き出してください。

特に入社間もない方にやってもらうことがおすすめです。実際のサービスを体験することになるので、研修・オンボーディングの一環になりますし、前提知識があまりない状態で素のお客様に近い感想がもらえます。

なお、自分たちでユーザー体験を行うことで改善点が浮かび上がるはずです。

改善点を深堀する中で「実際のお客様は問い合わせに至るまでにどう動くのか、どう思うのか」という点も気になりませんか?

ユーザーの行動を深堀できるのが当社の提供するKARTE RightSupportです。ご興味がある方は以下のページをご覧ください。

https://rightsupport.karte.io/ 

「回遊性(ほしい情報に辿り着きやすいか)」

情報が揃ったら、もう一つ重要なポイントは「回遊性」です。いくら情報があってもユーザーが求めている情報に辿り着けないとしたら、厳しい言い方ですが「存在していないも同然」ですよね。

ユーザーが自分に必要な情報にコンタクトできる状態を作るために、ユーザー行動のデザインや誘導が重要です。

ユーザーの「自己解決」施策に成功した2つの事例

本章では、ユーザーの自己解決の施策がうまくいった事例を2つ紹介します。

事例1

アパレル系ネットショップの「PAL CLOSET」様では、よくある質問をユーザーが知りたいタイミングで表示することでお問い合わせを90%削減することに成功しました。

まず問い合わせを分析してみると、配送の問い合わせがほとんど。そのため、注文完了画面と注文履歴画面で、配送についての注意書をポップアップで出すようにしました。

もともと配送については、さまざまなところで情報の記載がありました。ただ、この施策で配送についての問い合わせが90%も減ったということは、これまで注意書を置いておいても見てもらえていなかった。つまり「ユーザーは気になっていないことを先に出されても頭に入らない」ということを示唆しています。

問い合わせを分析したうえで、「既存の情報を、ユーザーに適したタイミングで見せる」ことが重要だといえる事例です。

参考:https://cxclip.karte.io/practice/palcloset-case02/

事例2

次はインターネット回線サービスである「So-net」様 での話です。
FAQなどで情報を準備しているのに「一切読まずに電話番号に一直線へ」というお客様が多数いました。

そこで、「ページの読了率」「滞在時間」「滞在後のアクション」などの行動データをAIで分析し、特定のパターンの動きをするユーザーに対しては、サポートするコンテンツを自動で表示するよう改善しました。

特定の条件を満たしたユーザーの画面において、チャットボットが「どうしました?」と語りかけてきます。このチャットボットが利用された結果、電話での問い合わせ数を17%削減できました。

「チャットボットを置いておくだけ」ではチャットボットを使ってくれないユーザーも、適切なタイミングで適切な選択肢を提示すれば利用してもらえるという好例です。

このように重要な網羅性・回遊性は、今後具体的な作り方もお伝えしていく予定です。

おわりに

今回は「自己解決に何が必要か」と「具体的な事例」をご紹介してきました。次回は、具体的に「どうやってお客様の声を集めるか」などについて触れる予定です。

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vol.03 仮説を立ててお客様の声を知ろう
#WEBサポート
#分析
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カスタマーサポート準備編

13

vol.03 仮説を立ててお客様の声を知ろう

#WEBサポート
#分析
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ビジネスに貢献するお客様の声を知るためには「定量データを知り仮説を立てること」が必要です。では、どのように問い合わせ履歴を分析し仮説を立てるのか。ポイントは定量→定性→定量の3ステップで進めることです。「仮説ベースで施策を打ち、結果を分析し次に活かす」という作業を繰り返すことで、効果が出るまでの時間を短縮できます。

前回は、ユーザーの自己解決には「正しい情報が整理された説明コンテンツ」が必要なことをお伝えしました。

ここでいう「正しい情報」は、お客様が求めている情報、つまり「お客様の声」のことです。

しかし、そのお客様の声もなんでもかんでも集めればよいわけではありません。

ではどうすればよいか。そこで今回は「ビジネスにきちんと貢献するお客様の声」を集める方法をご紹介します。

■ どうやったら良い「お客様の声」が出せるか

「ビジネスに貢献するお客様の声(=良いお客様の声)」を知るための第一歩は、定量データを知ることです。

なぜなら、問い合わせがあまり寄せられていない課題を解決しても、ビジネスへの貢献度は高くないからです。

具体的には、

  • 問い合わせ
  • 行動データ
  • POSデータ

を眺め、どこかに傾向や課題がないかを探します。

「何から手をつけていいかわからない」場合は、「問い合わせ履歴」を見ることから始めましょう。

問い合わせ履歴を定量的に集計するためには、上記画像のように各問い合わせの「チャネル」と「ラベル」を最低限揃えておくことが必要です。

このあたりについては、よく使われているCRMツールが入っていれば概ね問題はありません。

(チャネルやラベル、CRMの詳細については、別の記事でご紹介します。)

・分析の話

ここからは、定量的に「よくある問い合わせ」を集計してから、仮説を立てるまでの具体的な方法を詳しくご紹介します。

ポイントは、以下のように「定量→定性→定量」の3ステップで仮説を立てていくことです。

  1. 定量|よくある問い合わせを集計する
  2. 定性|問い合わせの解像度を上げる
  3. 定量|解決することで得られる効果を考える


①定量:よくある問い合わせを集計する

まずは定量的によくある問い合わせを集計し、「こういう問い合わせが多いのか」という傾向を知ることが重要です。

なぜ、まずは定量的なデータの集計から入る必要があるのか。

それは、繰り返しになりますが、問い合わせの数が多いお客様の声ほど、施策に落とし込んで解決したときに効果が得られやすいからです。

具体的には、問い合わせ履歴をラベル分けして集計し、「どうやら配送に関する問い合わせが多い」といった傾向を探していきます。

データが揃っていない場合は、いきなり定性で仮説を考えることも少なくありません。ただ、「担当者の想像ではたくさん来ている感覚であった問い合わせも、実際に計測してみるとそこまで多くなかった」といったケースも大いにあります。

このようなケースを防ぐためにも、まずは定量的なデータの集計から始めましょう。

「では、定量的なデータだけ集めればいいじゃないか」という声も聞こえてきそうです。

しかし、定量的に集計しただけでは「配送に関する問い合わせ」が多いことはわかっても、「具体的に配送の何を知りたいのか」がわかるとは言いきれません。この状況で具体的な施策に落とし込むのは難しいですよね。

そこで、定量的に分析した後は、定性的な分析を行います。

②定性:問い合わせの解像度を上げる

定量的によくある問い合わせを集計し「重要だと思われるお客様の声」を把握できたら、定性的に分析し解像度を高めていきます。

定性調査は、

  • 自分で体験してみる
  • お客様へのアンケートやインタビューを実施する

といった方法が有効です。

「配送に関する問い合わせ」の解像度を高めたいケースを例に、もう少し詳しく解説していきます。

自分で体験してみる

自分で体験してみる場合は、ユーザーの気持ちになりきって自社サイトで商品を購入してみましょう。

実際に商品を購入してみると「離島への配送料がわからない」「注文後に、いつ届くのかが気になる」といった課題が見つかったとします。

実際に自社サイトを利用してみることで、「課題がどのタイミングで発生したのか」「なぜ課題が発生したのか」など、どういった文脈で課題が発生しているかを把握できます。

お客様へのアンケートやインタビューを実施する

お客様へのアンケートやインタビューを実施することで、

  • より具体的なお客様の声
  • お客様が困った背景

が見えてきます。

例えば「配送に関する問い合わせ」が多かった場合。アンケートやインタビューで「配送の何について困ったのか」「購入前・購入後など、どのタイミングで困ったのか」をヒアリングします。

そうすることで「配送日が知りたかった」のか「配送料が知りたかった」のように、具体的な困りごとを把握できるようになります。さらに、「注文後に”結局いつ来るんだっけ?”と気になった」のように、疑問を持ったタイミングも把握できるのです。

このように、定性的な分析をおこなうことで「商品の購入後に配送日が気になるお客様が多くいる」という具体的な仮説が立てられますよね。具体的な仮説を立てられれば「購入完了画面に到着予定日を明記する」のような施策につなげられます。

③定量:解決することで得られる効果を考える

具体的な仮説と施策を立てられたものの、「どの仮説・施策から手をつけていけばいいのかがわからない」という人も多いのではないでしょうか。効果のある課題から解決していきたいですし、効果の薄い課題解決にリソースを割くわけにはいかないですよね。

そこで、課題を解決したときに得られるメリットやコストを定量的に考え、優先順位を決めていくことが重要です。

■注意:最初から完璧な問い合わせ削減を求めない

仮説を立てるときには注意点があります。
それは、「最初から完璧を求めないこと」です。

どんなに時間をかけて仮説を立てたとしても、施策が合わないなんてことは珍しくありません。

仮説を考え、問い合わせを削減するための適切な施策を打つためには、やってみなければわからないことがほとんどです。さらに、完璧な仮説と解決策を用意するには時間がかかりすぎてしまい、かえってコストがかかってしまいます。

過去のお客様の中には、入念にデータを集めてから仮説を立てようとした結果、時間がかかりすぎて集計したデータが無駄になってしまったケースがあります。

データを集めている間に、新型コロナウイルスの流行に伴い緊急事態宣言が発令

社会情勢が変わり、これまでのデータ集めが無駄に

改めて緊急事態宣言下でデータを集めている最中に緊急事態宣言が解除

社会情勢が変わり、これまでのデータ集めがまた無駄に

といった具合です。

一方で、別のお客様は、データが揃っていない状態でも仮説ベースで施策を次々に打ちつつ、データを集め続けました。その結果、社会情勢が変わっても施策を打ち続けられ、問い合わせ対応への稼働時間の削減に成功。「仮説を立てる→施策を打つ→結果を分析する」という作業を繰り返しおこなっているため、顧客のことを理解できるようになり、仮説精度もどんどん高くなったため、スピーディーに精度の高い施策を打てるようになりました。

完璧を求めて「データの集計や分析」「仮説の検証」に時間をかけるよりも、仮説段階でも施策を打ち、その結果をベースに次の施策やPDCAの実施に活かすことで、効果が出るまでの時間を短縮できます。

また、「構造上もう起こらない課題」には目をつけないようにすることも注意です。

「構造上もう起こらない問題」とは、例えば「過去に大規模障害が発生したときの問い合わせ」のような突発的な現象が起きたときのことなどを指します。そのときの問い合わせ内容は、常時のお客様の声ではありません。

慢性的な問い合わせと突発的な問い合わせを切り分けるために、「過去の施策」や「過去のイベント(トラブル)」と照らし合わせながら、問い合わせ履歴を分析していきましょう。

まとめ:次回は「お客様の感覚」を養おう

今回は、お客様の声を知るためには「仮説を立てることが必要」な理由や、仮説の立て方を解説しました。次回は、お客様の声を聞くために、コールセンターへのヒアリングがおすすめな理由や、その方法についてお話します。

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vol.04 センター行脚編
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カスタマーサポート準備編

14

vol.04 センター行脚編

#カスタマーサポート
#分析
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お客様の声を知るおすすめの方法のひとつが「コールセンターへのヒアリング」です。さまざまな問い合わせが集まるコールセンターでは、効率良くお客様の声の傾向を把握できます。本記事では、「ヒアリング前日まで」と「当日」に分けて、どのようにお客様の声を把握するかを詳しく紹介していきます。

ユーザーの自己解決を促し、カスタマーサポートの問い合わせを効率化するためには、お客様の声を把握することが第一歩です。

「それでは聞いてみよう」

と、勇み足でユーザーインタビューを実施したものの、準備に時間がかかりすぎてしまった上に、施策につなげられるような意見があまりない...そんな結果になってしまうケースは少なくありません。

このような失敗を避けるにはどうすれば良いか?

答えのひとつとして挙げられるのが「コールセンターへのヒアリング」です。

今回は、お客様の声を集める方法として「コールセンターへのヒアリング」がおすすめな理由をお伝えしたあとに、「どのようにコールセンターでヒアリングするか」について詳しくご紹介します。

コールセンター行脚のススメ

繰り返しになりますが、良いお客さまの声を聞く方法としておすすめなのが「コールセンターへのヒアリング」です。

コールセンターへのヒアリングがおすすめな理由は3つ。

  1. お客様がつまずくポイントを、実際に把握していること
  2. お客様の声が集まっているため、傾向が掴みやすいこと
  3. お客様に話を聞くよりも手軽ではやいこと

コールセンターは日々問い合わせやクレームを受けているからこそ、「ここを直したら良くなるのに」と意見を持っているスタッフが在籍しています。

また、準備に時間がかからないため、1ヶ月もあれば施策への落とし込みが可能です。お客様一人一人に話を聞く場合、顧客の選定やアポ取りに時間がとられてしまいますよね。その上、10〜20人の大人数に話を聞かないと傾向が掴めません。

一方で、コールセンターならセンターの責任者との連絡でアポを取れますし、多くのお客様の問い合わせに対応しているため「こういう問い合わせが多い」という傾向を把握しているスタッフも勤めています。

そのため、コールセンターで話を聞いてからアクションにつなげ、PDCAを回す方が、お客様一人一人に話を聞くよりもはやくお客様の声を施策に反映できる、というわけです。

どのようにコールセンター行脚を進めればいいか

ここからは、実際にコールセンターでのヒアリング方法を「ヒアリング前日まで」と「ヒアリング当日」に分けて紹介していきます。

ヒアリング前日まで

コールセンターで有益な情報を得るためには、まずは協力してもらいやすい日程調整が重要です。

繁忙期に訪問すると、コールセンターのスタッフは「電話対応が忙しいのに...」と思い、前向きな気持ちでヒアリングに参加できません。過去の応答率を参考にして、比較的忙しくない2週間〜1か月先の日程を2、3日確保します。その際、「ヒアリングの時間も通常通りの給与を支払う」と伝えましょう。

インセンティブは不要なことが多い

ちなみに、通常とは違う業務を行う「インセンティブ」が必要であったことは、経験上ほとんどありません。

考えられる理由は以下の3つ。

  • 本社(クライアント)へ意見を伝えることに価値を感じている
  • 建設的に話をして、業務効率が良くなる方がいいと思っている
  • サービスに誇りがあり、その改善に前向きである

さて、では当日は具体的にどのようにヒアリングを進めるべきでしょうか。

ヒアリング当日

コールセンターへの訪問は、一度の訪問で2〜3日滞在し、以下のような業務を実施します。

  • ヒアリング・コール履歴の確認
  • モニタリング
  • ワークショップ
  • 作業効率のチェック

ヒアリング・コール履歴確認

スタッフへのヒアリングは、以下のような手順で進めていきます。

  1. 「1時間×3人×3コマ」ほど話を聞く
  2. 訪問したスタッフ2〜3人で振り返りの時間を作る
  3. コール履歴をひたすら聞く

ヒアリングの内容は、テーマ次第です。

【例:退会・解約に関するテーマの場合】

  1. オペレーターの情報(所属、対応窓口、業務範囲、経歴、経験)
  2. 問い合わせてくるお客様の情報(なぜ電話してくるか、何を見て電話してきたか、事前にWebサイトを見ているか)
  3. 業務フロー(電話を受けたあとの処理、使いにくいツール、面倒な業務フロー)

ヒアリング後は、訪問したスタッフ2〜3人で振り返る時間を作り「情報の精査」や「聞き漏れの確認」を行いつつ、得られた情報から傾向を掴み仮説を立てます。さらに、WEBで代用できそうな業務フローを考えたり、対策についての意見を出しあったりと、現場で施策を考えることもあります。

そのあとは、仮説確認や施策検討のために、コール履歴をひたすら聞いたり、データを深掘りしたりして、ヒアリングは終了です。

モニタリング

「モニタリング」は、ワイヤレスヘッドセットなどを使って、問い合わせの会話をコールセンタースタッフのすぐ近くかつリアルタイムで聞き、情報を集める作業のことです。

「電話の内容を聞きたいなら、コール履歴を聞けばいいのでは?」と思うかもしれません。それでも現場でモニタリングを行う理由は、電話の直後にその問い合わせの担当者へ直接ヒアリングできるからです。

例えば、以前このような出来事がありました。

「この内容の問い合わせって多いですか?」「そもそもなんで電話してきたと思いますか?」と聞く

「よくわからないけど、こういう問い合わせは●●の代理店のお客様なんですよね」という情報が得られる

調べてみると、その代理店が「困ったらここに電話して」というオリジナル資料を渡しており、些細なことでも電話を発生させていることが発覚する

このように、問い合わせ対応の直後に話を聞くことで、新たな情報を得られることもあります。

ワークショップ

コールセンターへ訪問した際は、仮説をもとにしたワークショップも開きます。

ワークショップとは、どのようなものか。具体例がないとわかりにくいと思うので、これまでに実践した2つのワークショップの内容をご紹介します。

1つ目は、申し込みのフローからボトルネックを探すというもの。

問い合わせに対応している人たちだからこその視点で、お客様がつまずきやすいポイントや改善案を教えてもらいます。

2つ目は、自社のサービス申し込みページの改善案を考えるもの。

模造紙を使って自社の申し込みページをパーツごとに分解し、「問合せにつながりそうか?」「お客様の迷いを生むような表現はないか?」などの意見をもらいます。

紹介した2つの例のように、ワークショップは手続き系のページ改善に有効です。

それはなぜか?

まず、手続き系は開発を伴う改修がほとんどであり、お金も時間もかかります。なので、一回あたりの改修で確実な効果が見込めるよう、精査が必要です。そのため、日々、ユーザーの悩みに対応しているコールセンターのスタッフだからこそわかる、妄想ではなく、実際のお客様の声に近い意見の重要度が高まります。

作業効率のチェック

コールセンターを訪問した際は、そこで働くスタッフの働きやすさが向上するよう、作業効率のチェックも行います。

ざざっと歩きながら見渡すだけでも意外と改善点は見当たります。

例えば、以前訪問したコールセンターでは、以下のようなことがありました。

一部のチームだけディスプレイが1つしかなかった。

問い合わせを受ける際に、お客様情報などを入力するウィンドウが必要。
しかし、そのチームで受ける問い合わせは、PCで調べないと質問に答えられない。
そのため、一つの画面で「お客様情報入力用」と「調べる用」でウィンドウを行き来することになる。

デュアルディスプレイを提案し試したところ、問い合わせの回答効率が向上し、後処理の時間も短縮できた。

実際にコールセンターの業務を観察すると、上記のように改善点は見つかるものです。

■頻度について

コールセンターへの訪問は、経験上、実施する回数を増やすほど良い情報が聞き出せます。

しかし、短期間に頻繁に訪問すると「またヒアリング…?」と面倒がられてしまい、逆効果になることも。

では、どれくらいの頻度が良いか?

あくまで体感ですが、目安としては1拠点あたり、半年〜1年に1回くらいがちょうど良いと思います。

センター行脚は実施すればするほど良い情報が聞き出せる

コールセンターへの訪問は、お客様の声を把握できることだけではなく、「コールセンタースタッフとの関係性の構築」にも価値があります。関係性が良くなると、次回以降、濃密な情報を教えてくれる(情報を出し惜しみしなくなる)ものです。

では、どのように良い関係性を構築すればよいか?

そのコツは「ヒアリングで聞いた情報を元に改善し、その旨をきちんとコールセンターにも伝える」ことです。コールセンターで働くスタッフの立場で考えると、情報を提供したのに何も改善されていなければ「意見を伝えても意味がない」と思ってしまいますよね?

そう思われないためには、収穫があまりない(情報が薄い)場合でも、コールセンターで得られた情報をもとに1つ2つは改善したり、ワークショップのテーマにしたりすることが重要です。短期的には10点20点の施策かもしれませんが、良いデータを収集するためのインセンティブとして長期的には価値のある施策になります。

■注意:事前に上司を巻き込んでおく

コールセンターでヒアリングする際は、事前に上司を巻き込んでおくことが欠かせません。なぜかというと、ヒアリングで得た情報が薄い場合に「こんな改善は意味がない」と言われてしまい、アクションにつなげられない可能性があるためです。

繰り返しになりますが、どんなに小さな施策でも、次回以降の訪問で良い情報を引き出すための種まきになります。コールセンターへの訪問前に「情報を取りに行くので、インパクトの薄い改善案ばかりでも1つ2つは対応する」と上司に伝えておき、裁量を持たせてもらいましょう。

おわりに

今回は、良いお客様の声を集める方法として「コールセンターへのヒアリング」についてご紹介してきました。コールセンターは「宝の山」です。ぜひ一度、センターへのヒアリングを実施してみてくださいね。

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カスタマーサポート準備編

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vol.05 コンビニコーヒーから考えるCX改善の落とし穴

#CX
#顧客満足度

お客様の声を聞いてサービスを改善する際、サポートばかりに目が向いてしまい、サービス設計側の問題に気づきにくくなるケースがよくあります。本来、サービスそのものが使いやすければ、サポートは最低限で済むはずです。本記事では「コンビニコーヒー」を例に、サービス改善のよくある落とし穴とその改善方法について解説していきます。

カスタマーサポートの問い合わせ対応を効率化するため、FAQやサポートページに力を入れている。そんな企業の話をよく聞きます。お客様が疑問を自分で解決できれば、カスタマーサポートへ寄せられる問い合わせを減らせるためです。

しかし、FAQやサポートページを充実させることばかりに気が向いてしまうと「サービス設計側の問題に気付きにくくなる」という問題が発生します。

本来、サービスが使いやすく、わかりやすければ、サポート業務は最低限で済むはずです。

では、どのようにして、サービスを使いやすくしていけば良いか?

今回はコンビニコーヒーを例に「サービス改善のよくある落とし穴とその改善方法」についてご紹介していきます。

コンビニコーヒーから考えるCX改善の落とし穴

お客様の声を集めて課題を見つけ、その課題を解決するために施策を打つことはとても重要です。しかし、表面的な対応ばかりになってしまうケースもあります。

例えば、コンビニのコーヒーマシン。

洗練されたデザインではある一方で「操作方法がわかりにくい」と感じたことはありませんか?

以前、操作方法を説明するためのシールが大量に貼られているコンビニのコーヒーマシンが話題になりました。

おそらく、コーヒーマシンの操作方法がわからなかったお客様から、レジ担当のスタッフへ質問が頻繁に寄せられていたのでしょう。

聞かれる度に口頭で説明していては、他業務の進行の妨げになるため、操作方法を説明するシールで対応しているのです。

お店側でできる対応としてはこれが限界だと思います。

ただ、本来なら元のサービス設計、コーヒーマシンのデザインそのものに改善の余地があると思いませんか? コーヒーマシンがお客様にとって使いやすい(一目で操作方法がわかる)なら、「シールを貼って使い方を説明する」というサポートは不要ですよね。

しかし、「上質なコーヒーを提供する」というコンセプトのもと有名デザイナーとコラボレーションして作ったこともあり、使いやすさよりもデザイン性が優先され、操作方法が分かりにくいままになっているのです。

このように、お客様目線ではなく、企業が決めたコンセプト・デザイン性を優先した設計になっており、表面的な施策で凌ごうとするケースは少なくありません。

なぜ表面的な施策ばかりになってしまうのか?

ここまで紹介したコーヒーマシンの事例のように、表面的な施策で対処しているケースはさまざまな場面で見られます。

では、なぜ表面的な施策ばかりになってしまうのでしょうか?

その理由は「お客様の困りごとの根本原因」を把握できていないためです。

課題を見つけたからといって「全部対策しよう」と考えなしにサポート一辺倒になると、大量のシールが貼られたコンビニのコーヒーマシンのようになりかねません。

「どのボタンを押せばいいかわからない」「押しても反応しない(ボタンではない部分を押している)」というのは、あくまでも表面的な課題です。お客様が困っている根本原因は、「パッと見ただけでは、どのように操作すればいいかわからない」というコーヒーマシンの設計そのものにあるはずです。

サービス改善を目指すなら、サポートを実施する前に「お客様が何に困っているのかを突き詰めた上で、どういった対策が必要なのか探ること」が重要になります。

お客様の困りごとの根本原因は「体験して」見つける

「お客様の困りごとの根本原因を見つける」と言っても、お客様から寄せられた声を眺めているだけで見つけられれば苦労しません。

では、どのように「お客様の困りごとの根本原因」を見つければ良いか?

その方法のひとつに挙げられるのが「お客様目線で身をもって体験すること」です。自分たちで日常的に使うことで、お客様がつまずきやすいポイントにいち早く気付けます。

【例:コンビニコーヒー】

コンビニに入る

コーヒーを買うためにレジへ向かう

アイスコーヒーを頼んだら、氷の入ったカップをレジに持って行く必要があると説明を受ける

氷の入ったカップを持ってレジに並び直す

いざコーヒーマシンを使うと、間違えて小さいサイズのホットコーヒーのボタンを押してしまった

実際に体験し、少しでも「使いにくい」と思うポイントは、お客様に負荷がかかっているため改善の余地があります。

先ほどのコンビニコーヒーの例の中では、

  • 「ホットコーヒーはレジでカップをもらえるのに、アイスコーヒーは自分で氷の入ったカップをレジに持っていく必要がある」という案内が足りていないのでは?
  • ホット・アイスやサイズの表記がわかりにくいのでは?

といったような課題が見つかりました。

このままでは表面的な課題ですが、「そもそものサービスの設計に問題があるのではないか」と疑いながら何度も経験していると「慣れれば簡単に操作できるけど、初めて使う人にはわかりにくいのでは?」というような根本原因を発見できます。

このような改善ポイントは、実際にサービスを使わないと気づきにくいものです。なぜなら、お客様の声を聞くだけでは「課題が発生する前後のお客様の動き」や「課題が発生した背景」が見えにくいためです。

コーヒーマシンの例で考えると、通勤中や仕事の休憩時間などで急いでいる人ほど操作を間違えやすいかもしれません。

つまり、マシンのボタンをしっかりと確認すれば正しく操作できるものの、直感的に使うと間違えてしまう設計・デザインになっているということです。

お客様の困りごとの根本原因を探るためには、使い続けてみて、お客様がサービスを使うであろうすべてのタイミングで自社サービスを経験するのが理想です。

お客様の困りごとはサービスとプロダクトで分けて考える

お客様の困りごとは「サービスで困っているのか」と「プロダクト不全で困っているのか」の2種類に分けられます。

  • サービスで困っている:どのボタンを押せばいいかわからない
  • プロダクト不全で困っている:ボタンを押しても反応しない

サービスで困っているならCXやUIの改善が必要ですし、プロダクト不全で困っているなら不具合の復旧が必要です。このように、困りごとの種類で対応方法が変わるため、「サービスで困っているのか」と「プロダクト不全で困っているのか」は分けて考えましょう。

サービス面での困りごとを把握するために、申し込みや解約だけ体験するという方法もあります。また、人が対応する業務なら、覆面調査を実施するのもひとつの手段です。

プロダクト面での困りごとを把握するためには、実際にサービスや商品を使ってみる必要があります。高額商材のように実際に使うのが難しい場合、デモ環境やモックアップを使いプロダクトを触ってみるだけで、困りごとを把握できるケースもあります。

Webの場合はユーザートラッキングを使って根本原因を探せる

ちなみに、WebサービスでCX改善を実施する場合、ユーザートラッキングをきちんと使うことで、「お客様の困りごとの根本原因」につながるデータを取得できます。

例えば、

  • どのページを見てから問い合わせているか
  • 申し込みの際に、どの段階で離脱しているか

というデータを取得することで、実際に体験したときと同じように、課題が発生した前後の動きを把握できます。

ユーザートラッキングを手軽に実装できるのが当社の提供する「KARTE RightSupport」です。ご興味がある方は以下のページをご覧ください。

https://rightsupport.karte.io/

おわりに

今回紹介したコンビニのコーヒーマシンのように、お客様の困りごとの根本原因を改善できていないケースはよくあります。CX向上を目指すなら、表面的な対策ばかりにならないよう、身をもって自社のサービスや製品を体験してみてくださいね。

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vol.04 センター行脚編
#カスタマーサポート
#分析
#WEBサポート
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カスタマーサポート準備編

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vol.06 クロス分析を実施しカスタマーセンターの事業貢献を定量で把握する

#カスタマーサポート
#分析

「コストだけを見てカスタマーセンターを縮小し、顧客の満足度が下がってしまった」という失敗を避けるためには、カスタマーセンターが事業に貢献できているかを正しく把握する必要があります。そこで有効なのが「クロス分析」です。クロス分析を実施することで、サポート経験の有無やサポート品質が、サービスや商品の利用にどう影響しているかを把握できます。

「カスタマーセンターが事業に貢献しているか」を把握できていますか?

接客を伴う事業ではない限り、企業がユーザーと接点を持つ機会は多くありません。そのような中で、カスタマーセンターは、ユーザーとコミュニケーションを直接取れる貴重な場です。

コストセンターとして判断されることの多いカスタマーセンターですが、実は事業の利益獲得に貢献している可能性があります。しかし、カスタマーセンターがどれくらい事業に貢献しているかを評価するのは難しいですよね。

そこで、この記事では、カスタマーセンターの事業貢献度を測る方法として「クロス分析」についてご紹介していきます。

カスタマーセンターの事業貢献度を測定するクロス分析

そもそも、事業への貢献とは何か?

今回は、「売上やLTV(ライフタイムバリュー)のアップにつながっているか」と定義して話を進めていきます。簡単な例ですが、既存顧客がサービスを使い続けている要因のひとつに「カスタマーセンターのサポート」があるなら、カスタマーセンターが事業に貢献していると言えますよね。

では、どのようにカスタマーセンターの事業貢献度を測定すれば良いか?

その方法のひとつとして「クロス分析」が挙げられます。

クロス分析とは、複数の項目のアンケート結果を掛け合わせて分析していく手法のことです。クロス分析を実施することで、サポート経験の有無やサポート品質が、サービスの利用にどう影響しているかを把握できます。

カスタマーセンターの事業貢献度を測定する際は、【継続意向・推奨意向・サポートの経験の有無(品質)】の3項目をアンケートでヒアリングし、分析していきましょう。今回は、実例をもとにした仮の事例で具体的にご説明していきます。

  • 継続意向:今後も使い続けたいか
  • 推奨意向:友人や家族にすすめたいか
  • サポート経験の有無:サポートを受けたか(受けた場合は対応が良かったか)

クロス分析の進め方

クロス分析を進めていくために、まずはユーザーへのアンケートが必要です。

アンケートの内容は、次の3項目。

  • 継続意向(自分が継続する意思)の有無:0〜10の11段階
  • 推奨意向の有無(他人へのおすすめ具合):0〜10の11段階
  • サポート経験の有無:ありの場合は品質を5段階

アンケートを取り終えたら、サポート経験の有無とサポートの品質別に、継続意向と推奨意向の分布図を作成します。

縦軸を継続意向、横軸を推奨意向に設定した分布図を、サポートの有無・品質別にそれぞれ作成する

自社サービスがストックビジネスの場合、半年後の退会率を算出し、分布図に反映しておきましょう。

▼ストックビジネスとは?
一度の契約で継続的にサービスを利用し続けてもらうビジネスモデルのこと。
例:スマホの回線や映画の見放題サービスなど、月額費用を払って利用するサービス。

半年後の退会率を算出する理由は、「カスタマーセンターの品質と顧客のサービス継続の関係性を調べるため」です。

継続意向は自分が継続する「意思」なので、実際にサービスを使い続けるかはわかりません。アンケート実施後の退会率を調べることで「サービスを本当に使い続けているか」も把握した上で、カスタマーセンターがユーザーのサービス継続に貢献しているかを分析できます。

また、なぜ半年後かというと、比較的短期間でPDCAを回し、退会率を下げるための施策を試しやすいためです。

ここまででクロス分析の準備は完了です。作成した分布図を用いて「サポートの有無や品質が、サービスの継続や推奨につながっているか」を分析していきます。

アンケートに必要なユーザー数は2,000人が目安

アンケートを実施する際「どのくらいの人数に答えてもらえばいいの?」という疑問を持つ方もいるのではないでしょうか?

サービスを使っているユーザー数によって変わるものの、偏りのない意見を集めるための目安は2,000人です。

【2,000人の理由】
アンケートに必要なサンプル数は、

  • 許容誤差:アンケート結果で許容できる誤差
  • 回答比率:ユーザー数に対して回答してくれるユーザーの比率
  • 信頼度:許容誤差内の結果になる確率

を掛け合わせることで算出できます。
一般的に設定することが多い「許容誤差5%」「回答比率50%」「信頼度95%」でサンプル数を算出すると約400人。そこから年齢層を5段階に分けることが多いので「400人×5段階=2,000人」という計算になります。

ちなみに、ユーザーアンケートでは「ポイントやクーポンの付与」といったインセンティブを与えることも多いですが、個人的にはあまりおすすめしません。なぜなら、ポイントやクーポン目的で「すべて1番上にある選択肢を選ぶ」のように適当な回答が多くなってしまうためです。

適当な回答が多いとアンケート結果が実態とかけ離れてしまいます。適当に回答したであろうアンケートを省くのもひとつの手段ですが、手間と時間をかけたくありませんよね。

私の経験上、インセンティブがなくても、アンケートに答えてくれるユーザーは意外に多いものです。以前、会員向けサービスでユーザーアンケートを実施した際、アンケート依頼のメールを会員に一斉送信するだけで、7,000人ほどが答えてくれました。

インセンティブを謳わずにアンケートを実施し、きちんと答えてくれた人に向けてサプライズでインセンティブを与えることで、企業イメージの向上にもつながりますよ。

クロス分析でわかったことの事例

クロス分析を実施することで「サポート経験の有無やサポート品質」が、「サービスの継続や口コミでの拡散」にどう影響しているかが見えてきます。

例えば、「サポートの品質が良かったと答えたユーザーの方が継続する意思が高かった」という結果が出れば、カスタマーセンターが事業に貢献していると言えますよね。

過去に月額課金制のWEBサービスの顧客に対してクロス分析を実施したところ、「サポート品質が高いと、継続意向(自分が継続する意思)・推奨意向(他人へのおすすめ具合)が上がる」という当然の結果はありつつ、意外な結果も判明しました。

それが「サポートが少しでも悪かったときの反応」です。

  • 多少サポートが悪くても、サービスを継続する意思はあまり下がらない
  • 少しでもサポートが悪いと、他の人へのおすすめ具合が大きく下がる
  • 元の満足度が高い人ほど、サポートが少しでも悪いとすぐに退会する

まず、多少サポートが悪くても、継続する意思には影響しませんでした。ただし、サポートが悪いと感じたユーザーは、家族や友人にすすめようと思わなくなっていたのです。

このようなユーザーは、他のサービスをすすめ始めることもあるため、口コミによる新規顧客獲得の機会を失うどころか、競合の新規顧客獲得を後押しすることになりかねません。

また、満足度が高く「サービスを継続したい」「家族や友人へもすすめたい」と思ってくれているユーザーの一部が、半年後に退会していました。詳しく調べてみると、退会の直前に問い合わせており、その問い合わせへの評価が低いことがわかりました。

つまり、「一度の問い合わせ対応の失敗で、満足度の高いユーザーほど解約してしまう場合がある」ということです。満足度が高いとサービスに対する期待値も高くなるため、問い合わせても悩みが解決できないと、解約につながってしまうと考えられます。

特に他人へ積極的にすすめてくれているユーザーを離反させてしまうのは、事業へのダメージが大きいですよね。

クロス分析後のアクション

そこで、この事例において、まずは「120点の良いサポート」をするよりも、「全員が80点のサポートができる仕組み」を整えることが重要だと判断しました。

80点未満の悪いサポートを引き起こした原因を探ると「人員不足」が大きな原因だと判明したので、縮小どころか人員を増やすことを決定したのです。

今回の事例のように、「良いサポートをするよりも、悪いサポートをしないように人員を強化する」といった結論になることもあれば、「120点の"神"サポートを目指していく」という結論になることもあると思います。

いずれにしても、コストだけ見てカスタマーセンターを縮小し、顧客満足度を下げてしまわぬよう、まずはクロス分析を実施して「カスタマーセンターが事業に貢献しているか」を測ってみましょう。

おわりに

今回は、カスタマーセンターが事業に貢献しているかを測る方法として「クロス分析」についてご紹介しました。コスト削減を掲げてカスタマーセンターを縮小し、必要なコミュニケーションを減らしてしまわぬよう、まずはカスタマーセンターがきちんと事業に貢献しているかを分析してみましょう。

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カスタマーサポート準備編

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vol.07 SNSを使ったVoC活用の落とし穴

#VoC
#CX
#分析

SNSの普及により、企業がお客様の意見を集めやすくなりました。しかし、SNS上のお客様の声を参考にすると、誤った施策につながってしまうケースがあります。自社製品やサービスの改善を目指してVoC活用を進めるなら、カスタマーセンターに集まったお客様の声を優先することで、顧客満足度を高められます。

お客様の声を集めて分析し、サービス改善やマーケティングなどに活かす手法である「VoC(Voice Of Customer:顧客の声)活用」。近年、SNS上の顧客の声を拾って分析する企業が多く見られます。

しかし、実は「SNS上でのVoC活用は誤った施策につながる」ことをご存じでしょうか?

そこで本記事では、SNS上のVoC活用の落とし穴とその対策について解説していきます。

「せっかく手間をかけたVoC活用が、役に立たないどころか事業の足を引っ張る」という失敗を防ぐためにも、ぜひ最後までご覧ください。

VoCは3種類に分けられる

そもそもVoCは、お客様の声の収集先によって大きく以下の3種類に分けられ、それぞれ「得られる情報の量や質」が異なります。

  • 実店舗などでの接客時にわかるVoC
  • カスタマーセンターからあげられてくるVoC
  • SNS上でのVoC

まず、情報の量とは「お客様の声をどれくらい集められるか」のことです。

実店舗で直接意見を寄せてくれるお客様は、当然ですが実店舗に来店しなければいけません。実店舗に来店して、さらには会話ができるお客様よりも、電話で問い合わせてくれるお客様の方が多いですし、わざわざ電話するお客様よりも気軽にSNSに意見を投稿するお客様の方が多いですよね。

このように、どのようにお客様の声を集めるかによって、情報の量が大きく変わります。(下図参照)

情報の質とは「お客様の声の解像度」のことです。

実店舗では一対一で会話しているため、お客様の意見を深堀りできますし、意見を聞く前後のお客様の行動を観察して多くの情報を取得できます。

カスタマーセンターでもお客様に質問して意見を深掘りできますが、お客様は直前の行動を明確に覚えているとは限りませんし、何度も質問するとクレームにつながりかねません。

ちなみに、Web経由での問い合わせなら「KARTE RightSupport」を活用することでお客様が電話する前の行動も追跡して把握できます。

SNSでは、商品やサービスの評価を集められたとしても、なぜそのような評価に至ったかまではわかりません。

また、SNSはそもそも「本当に商品やサービスを利用したか」がわかりにくいという側面もあります。

もし、実際に商品やサービスを使っていないとして、わざわざ店舗へ行って店員に話しかけたり、わざわざ連絡先を調べて電話をかけたりすることは面倒ですよね。一方で、SNSは気軽に投稿できるため、実際は使っていないのに使ったふりをする「嘘の投稿」も容易です。

このように、どのようにお客様の声を集めるかによって、情報の質も大きく変わります。(下図参照)

加えて、SNS上の声を集めると、ノイズが多く含まれてしまうという問題も見逃せません。

「ノイズも多く含まれてしまう」とはどういうことか、詳しく解説していきます。

SNS上でのVoCがサービス改善に向かない理由

繰り返しになりますが、SNS上のVoCはノイズも多く含まれてしまうため、誤ったネクストアクションにつながりかねません。

具体的にどういうことなのか、Twitterを使ったVoC活用を例に解説していきます。

Twitter上に投稿されたお客様の声を集める際、一つ一つの投稿をチェックするには時間がかかりすぎるため、テキストマイニングツールを使うのが一般的です。

テキストマイニングツールとは、ユーザーの投稿の中から特定の単語を使った投稿を抽出できるツールのことです。例えば、「〇〇 素晴らしい」という単語を指定すると、その単語が使われた投稿を抽出してまとめてくれます。

非常に便利なツールですが、抽出する単語によっては事実とは違う集計結果が出てきてしまうのです。

例えば、皮肉っぽく批判している文章をポジティブな意見として集計してしまいます。

【例:「〇〇を買ったけど、使い始めてすぐに壊れた。なんて素晴らしい耐久性なんだ。」】
素晴らしいと表現していますが、褒めているわけではありませんよね。「製品名」「素晴らしい」という単語で好意的な意見を集めようとたものの、実際は酷評している意見も含まれている可能性があります。

また、テキストマイニングツールは、文字になっていないとわからないという弱点もあります。

【例1:製品の写真+「これ最高だった」という感想の投稿】
写真を検知できないため、製品を褒めてくれているのに集計できない。

【例2:「〇〇いいよな」「だよな/確かに」という会話】
2人が褒めていますが、「だよな」という返信には製品名が入っていないためカウントできず、1人しか褒めていないことになってしまう。

このように、本来であれば多くの人が評価している商品・サービスでも、すべての声を検知できないため、集計結果に歪みが出てしまいます。

私の体感ですが、最近はSNS上でのVoC活用をやめる企業が多い印象です。今後ツールが発展し、皮肉文や画像の分析精度が高まれば、SNSを使って質の高いお客様の声が集められるようになるかもしれません。

SNSは拡散の捉え方も難しい

SNSの特徴として「お客様の声が拡散されること」も挙げられます。

「拡散された回数=共感している人の数」であれば、拡散されている投稿の内容を製品やサービスの改善につなげれば良いのですが、実態はそう単純ではありません。

例えば、Twitterのリツイート機能で「●●は××のようになればいいのに」というような、自社サービスの改善案が拡散されているとします。企業にとっては、多くのお客様が共感していると捉え、できるだけはやく改善するべきだと思うかもしれません。

しかし、「実際にサービスを使ったお客様が共感してリツイートしているケース」がある一方で、「使っていない人がなんとなくリツイートしているケース」もあります。また、リツイートした上で「今のままで使いやすいのに」と投稿しているような、正反対の意見を持ったお客様が拡散を手助けしているケースもあります。

どのケースでリツイートされていても、すべて1回のリツイートとしてカウントされるため、拡散された回数と実際のお客様の声の数が同じとは限りません。

予算をかけてSNSで拡散されている改善案を取り入れるものの、実際は「改善前の方が良かった」と考えるお客様の方が多い可能性も考えられます。

SNSのVoCにはノイズが多く含まれていることに加え、拡散されたときの実態が掴みにくいため、既存商品やサービスの改善には難しいのです。

VoC活用はカスタマーセンターを優先するのがおすすめ

「既存商品やサービスの改善」を目的にVoCを活用する場合、SNS上のVoCはあまり向いていません。正確な情報を集めるのが困難なため、実態とは異なる情報を参考にして、間違えた施策を打ってしまう可能性が高いためです。

では、VoC活用はどのように実施すれば良いか?

おすすめは、カスタマーセンターからあげられてくる声を優先する方法です。

カスタマーセンターは実店舗よりもお客様の声を集めやすいですし、そもそも接客を伴わない事業の場合、カスタマーセンターこそがお客様とコミュニケーションを取れる貴重な場ですよね。

また、お客様と会話しながら悩み事を深掘りできるため、本当に改善が必要な点を見つけられることもカスタマーセンターの強みです。

お客様は改善を求めてわざわざ電話しているはずなので、カスタマーセンターに集まったVoCを分析してサービスを改善すると、顧客満足度の向上につながりやすいという側面もあります。

「カスタマーセンターに寄せられるお客様の声を施策につなげるための効果的な方法」は下記記事で紹介しているので、合わせてご覧ください。

>>vol3.仮説を立ててお客様の声を知ろう

マーケティング観点ではSNSを使ったVoC活用も有効

SNS上を使ったVoC活用が「既存商品やサービスの改善」には向かないと述べましたが、マーケティングの観点では非常に有効です。

前述した通り、SNS上の声を参考にして既存商品やサービスの改善を目指すと、ノイズが多くなってしまうため、間違った施策につながってしまうことが多くあります。

とはいえ、製品名やカテゴリー名などのキーワードが使われた投稿を分析することで、「新しいニーズの発見」や「競合他社の動向や業界のトレンド把握」に役立てられます。

おわりに

今回は、既存商品やサービス改善を目的としたSNS上でのVoC活用の弱点をご紹介しました。次回からは、「カスタマーサポート実践編」として、お客様の自己解決を促すための具体的なイロハを紹介する予定です。

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