Vol.01
自己解決を加速させるカスタマーサポートとは?
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Chapter
3

CS担当者が知っておきたい基礎知識

31

サポート基礎No.01 CS担当者が知っておきたい主な指標

#カスタマーサポート

CS(カスタマーサポート)では、よく使われる指標がいくつもあります。中には、名前は聞いたことがあるものの、意味をしっかり把握できていない指標があるかもしれません。そこで、覚えておかないと業務に支障が出る可能性がある、代表的な指標をまとめました。

「CS(カスタマーサポート)の担当になったものの、経験がなく何から勉強すればいいかわからない」

このような方に向けて、CS担当者が知っておきたい基礎知識をご紹介します。

今回は、カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違いを説明したうえで、CSで使う主な指標をまとめました。

CSでは、業務を進める際にさまざまな指標が使われています。「上司から指示を受けたが、指示の内容が理解できない」とならないよう、よく使われる指標だけでも覚えておきましょう。

そもそもCSとは?

CSはさまざまな略称に使われているため、まずはCSが何を意味するかを確認しておきましょう。

CSと表現されるものは主に3つあります。

  • カスタマーサポート(Customer Support)
  • カスタマーサクセス(Customer Success)
  • 顧客満足(Customer Satisfaction)

特に区別がつきにくいのが、カスタマーサポートとカスタマーサクセスです。両者には、以下のような違いがあります。

  • カスタマーサポート:お客様の疑問を解消する
  • カスタマーサクセス:お客様の目標達成のために伴走する

カスタマーサポートの役割は、お客様が製品やサービスを使う上で発生した問題や疑問を解決すること。具体的には、問い合わせ対応やサポートサイトの運営などを担当しています。

一方で、カスタマーサクセスの役割は、お客様が目標を達成できるよう伴走することです。お客様が疑問を持っていなくても、カスタマーサクセスが自発的に提案・手助けすることもあります。また、クロスセルやアップセルなどの、セールス的な動きをする場合もあるのがカスタマーサクセスです。

本記事では、「CS=カスタマー"サポート"」と定義して、CS担当者が知っておきたい基礎知識を紹介していきます。

CS(カスタマーサポート)でよく使う指標

CSではさまざまな指標が使われています。その中から、CS担当者が知っておきたい指標をまとめました。

  1. 着信数
  2. 応答数
  3. 応答率
  4. ASA(Average Speed of Answer)
  5. AHT(Average Handing Time)
  6. CPH(Call Per Hour/Chatl Per Hour)
  7. voice/non-voice比率
  8. LTV(Life Time Value)
  9. Churn Rate(チャーンレート)
  10. NPS®(Net Promoter Score)
  11. お客様満足度(CS:Customer Satisfaction)
  12. PV/UU/CV

1.着信数

着信数は、電話や有人チャットで寄せられた問い合わせの数のことです。オペレーターが対応できたかに関係なく、着信した件数をカウントします。

多くのCSでは、この着信数を減らすために、お客様がFAQなどを見て自分で解決する「自己解決」を促す施策に力を入れています。お客様が自分で解決できる内容については、FAQやチャットボットを使って解決してもらうことで、着信数を減らして問い合わせ対応にかかるコストを削減できます。

2.応答数

応答数とは、オペレーターが対応できた電話や有人チャットの問い合わせ数のことです。着信数とは異なり、あくまでも対応できた問い合わせだけをカウントします。

例えば、電話だと「放棄呼」というお客様が呼び出し中に切った着信が存在します。着信数の場合はこの放棄呼もカウントしますが、応答数の場合はカウントしません。

3.応答率

応答率とは、着信のなかで何件応答できたかを示す指標です。「応答数 ÷ 着信数 = 応答率」という式で計算できます。

コールセンターの場合、同時に受けられる電話の数が決まっていますよね。そのため、すべての着信に対応できるとは限りません。

【例】
オペレーターの数が100人で、同時に200件の電話がかかってきた場合、200件中100件に対応できるため応答率は50%(100 ÷ 200 = 0.5)。100人に対応できているが、100人はオペレーターの応対を待っている状態。

オペレーターの応答を待っている人のことを「待ち呼」と呼びます。ほとんどのコールセンターでは、いかに待ち呼を減らすか、そして応答率を上げるかが課題です。

電話がつながらないサービスは顧客満足度が下がりますし、クレームにつながることも考えられます。

では、どのようにして応答率を上げればいいのか?

応答率を上げる方法は大きく2つあります。

  • 電話の受け皿を広げる
  • 電話の数を減らす

電話の受け皿を広げるためには、オペレーターの雇用や設備の準備が不可欠です。コストがかかるため、なかなか採用できません。

そこで、電話ではなくても解決できる内容の電話の数を減らし、着信数を減らすことで応答率を下げる施策を、多くの企業が実践しています。

詳しくは「vol.01 定義・総論編 」で解説していますので、ぜひご一読ください。

4.ASA(Average Speed of Answer)

ASA(Average Speed of Answer)は、顧客が電話をかけてから、オペレーターにつながるまでの平均時間のことを指します。

当たり前ですが、ASAはできるだけ短いのが理想です。ASAが長いと「電話をかけてもつながらない」とお客様が不満に思い、顧客満足度や口コミ評価の低下につながってしまいます。

ASAを短くするためには、応答率を上げる施策と同じように、電話での問い合わせ数を減らすのが効果的です。

ASAが長くなってしまう原因のひとつは、オペレーターの数以上に電話がかかってくること。オペレーター全員が電話対応中だと、新たにかかってきた電話は応答待ちになってしまいます。

電話ではなくても解決できる内容の問い合わせを減らせば、着信数を減らせるため、応答待ちのお客様の数も減らせますよね。電話をかければすぐにつながるようになり、顧客満足度の低下を防げます。

5.AHT(Average Handing Time)

AHT(Average Handing Time)は、電話を受けてから後処理を終えるまでの平均時間のことです。AHTが短いほど、オペレーターが1日に多くの電話に対応できていることになります。

ただし、電話対応の時間の短縮を目指して早口になったり、お客様の要望に応えられなかったりして、顧客満足度が低下してしまうのは避けなければなりません。

ではどうすれば良いか?

AHTを短縮するには、通話と後処理をそれぞれ見直す必要があります

通話時間を短くする際の鍵は、「保留時間をいかに短くするか」です。

例えば、お客様の情報や問い合わせ内容の解決方法を探す時間を短縮できれば、通話時間は短くなりますよね。具体的には、「検索性の高い情報管理ツールの導入」「デュアルモニターへの変更」といった施策が考えられます。

後処理にかかる時間の短縮を目指す場合、

  • 電話で対応しながら履歴を入力できるようトレーニングする
  • 自動で録音、テキスト化してくれるツールを導入する

といった方法があります。

6.CPH(Call Per Hour/Chat Per Hour)

CPH(Call Per Hour/Chat Per Hour)は、オペレーター1人当たりが、1時間(60分)で何件の電話/チャットを受けられたかを示す指標です。数値が高いほど、電話対応の効率が良いと言えます。

【例】
AHT(電話を受けてから後処理を終えるまでの平均時間)が20分だった場合、60分 ÷ 20分でCPHは3となる。

電話の内容によりますが、CPHは3.5前後でトップレベルなことが多いです。

なお、CPHは電話だけでなく、チャットに対しても使われます。チャットの場合、CPHが5〜7ほどになる(1時間に5〜7件の問い合わせに対応できる)こともあります。

7.voice/non-voice比率

voiceとは「電話やビデオ通話のような音声チャネルでの問い合わせ」のこと、non-voiceとは「チャットやメールなど音声以外での問い合わせ」のことです。

近年、 non-voiceでの問い合わせ対応が増えています< /u>。

その理由は、voiceに比べてnon-voiceの方が効率が良いためです。

電話だと1件ずつしか対応できないため、1時間に対応できるのは多くても3〜4件ほど。一方で、チャットなら同時に複数の問い合わせに対応できるため、1時間あたり7件に対応できるトップオペレーターもいます。

着信数が同じなら、1時間に対応できる件数が多いnon-voiceの比率を上げた方が、CSの運営にかかるコストを圧縮できますよね。

そこで、最近では「non-voice比率」という指標も使われることが増えました。non-voice比率とは、全体の問い合わせ数の中で、チャットやメールでの問い合わせ数の比率を示した指標です。

例えば、100件の問い合わせのうち、「電話が30件」「チャットとLINEが70件」だと、nonVoice比率は70%となります。

目指すべき数値は企業によって変わるため、まずは現状のnon-voice比率を算出しつつ、電話ではなくても解決できる問い合わせがどれくらいあるかを明確にしましょう。そのうえで、non-voice比率を上げるための施策を考えていきます。

8.LTV(Life Time Value)

LTV(Life Time Value)は、顧客が生涯を通じてどれだけの価値を企業にもたらすかを示した指標のことです。日本語では「顧客生涯価値」と訳されています。

  • 月額制のサービス:どれだけ継続してもらえるか
  • 買い切りの製品やサービス:生涯に何回買ってもらえるか

カスタマーサポートの品質が悪いと、離れてしまうお客様が多くなり、LTVを下げてしまいます。

参考:vol.06 クロス分析を実施しカスタマーセンターの事業貢献を定量で把握する 

9.Churn Rate(チャーンレート)

Churn Rateとは解約率のことです。会員制サービスにおいて、全会員のうち解約したお客様の割合を示します。なお、有料会員から無料会員になったお客様も、解約とみなして計算することがほとんどです。

月間のチャーンレートの平均は3〜10%ほど。製品やサービスによって変わるため、競合サービスのチャーンレートと比較して、良し悪しを判断するのが一般的です。

Churn Rateは、先ほど紹介したLTV(Life Time Value)と密接に関係しています。

「Churn Rateが低い=継続して製品やサービスを使ってくれるお客様が多い」ということなので、LTVは向上しますよね。反対に、Churn Rateが高くなるとLTVは下がってしまいます。

10.NPS®(Net Promoter Score)

NPS®(Net Promoter Score)は、お客様が企業やブランドに対してどれくらい愛着や信頼があるか(顧客ロイヤルティ)を示す指標です。

お客様へのアンケート調査を実施して数値化します。アンケートの内容は、推奨意向(友人や家族にすすめたいか)を0〜10の11段階で回答してもらうというものです。

アンケート調査の結果から、「9〜10と推奨意向が高いお客様の割合 - 1〜6の推奨意向が低いお客様の割合」を計算するとNPS®がわかります。

【例】
推奨意向が9〜10のお客様が50%、1〜6のお客様が30%なら、50% - 30%でNPS®は20となる

11.顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)

顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)は、商品やサービスを購入したお客様が、その商品・サービスにどれくらい満足したかを数値化したものです。

顧客満足度が高いとリピート購入や利用頻度が高まるため、どの企業も顧客満足度の向上を目指しています。

顧客満足度は、

  • アンケート調査
  • ユーザーインタビュー
  • 接客時のヒアリング

といった方法で調査します。

アンケート調査の結果の見方として、よくあるのが「TOP2やBOTTOM2」をチェックする方法です。

TOP2は良い評価の上位2つのこと、BOTTOM2は悪い評価の下位2つのことを指します。

例えば、問い合わせ品質に関する顧客満足度の場合、悪い評価は自社全体の評価を下げてしまうリスクがありますよね。そこで、「BOTTOM2をチェックし、BOTTOM2が多い場合は不満に思われないための施策を考える」という見方ができます。

そのうえで、「不満に思われないための施策」に効果があるかを評価するために、再度アンケート調査をおこない、BOTTOM2を集計するといったような具合で検証します。

12.PV/UU/CV

PV/UU/CVは、サイト運営において使われる3つの指標です。CSにおいては、サポートサイトの分析で用いられます。

PV(ページビュー)は、閲覧されたページの総数のことです。あるユーザーが5つのページを閲覧した場合、PVは5となります。

【例】
ECサイトにおいて、あるお客様がサイトに訪れ(+1PV)よくある質問ページに移動し(+1PV)送料についてのページをクリックした(+1PV)場合、PVは「1 + 1 + 1 = 3」となる。

UU(ユニークユーザー)は、サイトに訪問したユーザーの数のこと。PVとは違い、あるお客様がサイト内をどんなに回遊してもUUは1です。

ただし、パソコンのIPアドレスやクッキーなどを特定してカウントしているため、同じ人でも自宅のWi-Fiを使ったパソコンと別の通信回線を使ったスマートフォンでそれぞれ1回ずつサイトに訪問すると、UUは2となります。

また、最初の訪問と再訪の時間が一定期間空くと、2回目の訪問でもUUが1とカウントされます。

【例】
同じお客様が毎日1回ずつ訪問していると、1週間のUUは1回 × 7日 = 7となる。

なお、最近はUUではなく「セッション」と表現することも多いです。どちらもサイトに訪問したユーザー数のことを表しており、セッションはサイトの離脱から30分ほど経つと、同じユーザーでも1としてカウントするのが基本です。

CV(コンバージョン)は、サイトの成果が達成されることを指します。例えば、ECサイトの場合は商品の購入、動画見放題サービスなら会員登録などがCVと設定されることが多いです。

CVに達成したユーザーの割合をCVR(コンバージョンレート)と呼びます。UU/セッションから割合を出すのか、PVから出すのかは商品によります。

おわりに

今回は、CS担当者が知っておきたい基礎知識として、主な指標を紹介しました。次回は「CS担当者が把握しておきたい用語」についてご紹介する予定です。

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CS担当者が知っておきたい基礎知識

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サポート基礎No.02 CS担当者のための用語集

#カスタマーサポート

CSの担当者なら知っておきたい用語をまとめました。知らないと「CS内での会話についていけない」「上司の指示の内容を理解できない」といった恐れがあります。また、間違えて認識しており、ミスにつながるかもしれません。知っている用語でも、CSにおいてどのように使われているかを把握しておきましょう。

CS部門ではさまざまな専門用語が使われています。知らないとCS部門内でのコミュニケーションに支障をきたすうえ、間違った解釈のまま業務を進めてミスにつながる恐れもあります。

そこで、CS担当者なら知っておくべき用語をまとめました。

各用語の説明はもちろん、CSにおいてどのように使われているかも解説していますので、参考にしていただけたら幸いです。

CS業務を進めるうえで知っておくべき用語

さっそく、CS担当者が知っておくべき用語を紹介します。

言葉そのものは知っていても、CSにおいてどのように使われているかを把握していないこともあるはずです。

CSの現場で本当に使われている用語をピックアップしているので、CS担当の方は押さえておきましょう。

▼カスタマーサポートに関する用語

  • VoC
  • ナレッジ

▼分析に関する用語

  • KGI
  • KBO(KBOツリー)
  • KPI
  • 定量/定性
  • クロス分析

▼Webサポートに関する用語

  • リファラ
  • ハイレベルサイトマップ
  • FAQ
  • wiki
  • SEO

▼CXに関する用語

  • CX(Customer Experience)
  • 自己解決
  • カスタマージャーニーマップ
  • UI/UX
  • ロイヤルカスタマー
  • サイレントカスタマー

▼ビジネス用語

  • オンボーディング
  • リード
  • リテンション率
  • アップセル/クロスセル

カスタマーサポートに関する用語

  • VoC
  • ナレッジ

VoC

VoC(Voice of customer)とは、「顧客の声」のことです。

【VoCの例】

  • 電話で寄せられた不具合の報告
  • ECサイトに投稿された口コミ
  • SNSに投稿された評判

お客様の声を集めて分析し、サービス改善やマーケティングに生かす手法を「VoC活用」といいます。

経験上、VoCを集めたものの、うまく活用できていない現場が多いと感じています。

VoCの活用が難しい主な理由は、「顧客の声に対応すべきか?対応しなくていいか?がわかりにくい」ことです。

例えば、「バグの報告」や「CSの態度が悪いといったクレーム」なら、少数意見でも直すべきだと判断できますよね。しかし、このようなクリティカルではない声へ手当たり次第に対応するには、時間も人手も足りません。最悪の場合、他のお客様に「改善前の方が良かった」と思われてしまう恐れもあります。

ではどうすればいいか?

VoCを商品やサービスの改善に活用する場合は、「顧客目線で考えてどの声が重要なのか優先順位をつけること」が重要です。

詳しくは下記記事で解説しているので、ぜひチェックしてみてください。

>>vol.07 SNSを使ったVoC活用の落とし穴

ナレッジ

ナレッジとは、カスタマーサポートで働くスタッフが、業務を進めるために必要な知識のことです。具体的には、電話応対のためのトークスクリプト、メールやチャットのテキスト応対におけるテンプレートなどを指します。

CS内でナレッジが共有できていれば、お客様から寄せられる問い合わせに対して、誰もが同じようなクオリティで対応できます

分析に関する用語

  • KGI
  • KBO(KBOツリー)
  • KPI
  • 定量/定性
  • クロス分析

KGI

KGI(Key Goal Indicator)は、企業が目指す最終的なゴールのことです。日本語では「経営目標達成指標」や「重要目標達成指標」と訳されます。

部門ごとにKGIを設定する場合は、その部門の最終的なゴールを指します。

KGIは上長が設定するケースが多いため、CSの担当者がKGIを考えることはほとんどありません。とはいえ、「KGI達成のためのKBOとKPIを考える」というように用語を見聞きする機会があるはずなので、意味を押さえておきましょう。

CS担当者が考えるのは、このあと紹介するKBOとKPIです。

KBO(KBOツリー)

KBO(Key Business Objectives)は、KGIの達成に向けたアクションのことです。KBOをツリー状につなぎあわせたものをKBOツリーと呼びます。

KBOツリーを作成することで、KGIを達成するために、どんなアクションが必要かを具体的・体系的に把握できます

詳細や作り方は以下の記事にまとめているので、ぜひご覧ください。

>>vol.10 Webサポート設計に欠かせないKBOツリー作りのイロハ

KPI

KPI(Key Performance Indicator)は、目標の達成状況を数値化した指標のことです。

KPIを正しく設定することで、KBOが正しく進められているかを判断できます

ただし、KPIの設定を間違えると、「KPIは達成しているものの、KBOが達成されない」という状態になりかねません。下記記事でKPI設定のよくある失敗例を紹介しているので、合わせてご覧ください。

このKPIは、先ほど紹介したKGIとよく混同されます。違いは結局、KPIは目標達成までの「過程」であるのに対し、KGIは目標そのものである「結果」であるということです。

定量/定性

定量は数値・数量で表すこと、定性は数値化できない部分を表すことです。

【例】

  • 定量→問い合わせ数を100件減らす
  • 定性→お客様に寄り添ったわかりやすいサポートサイトを作る

「定量的/定性的」「定量調査/定性調査」「定量分析/定性分析」「定量評価/定性評価」など、さまざまなシーンで使われます。

CSにおいて、定量と定性の両方の視点でデータ分析することで、良い(ビジネスに貢献する)お客様の声を把握できます。定量だけだと数字では見えない部分を見落としてしまいますし、定性だけでは具体的な目標の設定ができません。

定量/定性での分析については、下記記事で詳しく紹介しています。

>>vol.03 仮説を立ててお客様の声を知ろう

クロス分析

クロス分析は、複数の項目のアンケート結果を掛け合わせて分析していく手法です。複数の軸で分析することで、分析結果が具体的になります

例として、CSの事業貢献度を測定する場合を見ていきましょう。

CSが事業に貢献しているかを分析するため、下記3つの項目のNPSアンケートを取りました。

  • 継続意向:今後も使い続けたいか
  • 推奨意向:友人や家族にすすめたいか
  • サポート経験の有無:サポートを受けたか(受けた場合は対応が良かったか)

1つの項目だけで結果を見ると、「使い続けたい人が多い」や「サポートを受けた人は少ない」といった結果しかわかりません。

一方で、クロス分析を実施することで、「サポート経験がある人ほど継続する意向が強いが、人にすすめる意向はサポート経験の有無で変わらない」というような結果が見えてきます。

>>vol.06 クロス分析を実施しカスタマーセンターの事業貢献を定量で把握する

Webサポートに関する用語

  • リファラ
  • ハイレベルサイトマップ
  • FAQ
  • wiki
  • SEO

リファラ

リファラは参照元のことです。Webサイトにおいて、あるページにアクセスする前に閲覧していたページのことを指します。

サポートサイトを運営するCSにとって、リファラはお客様の自己解決を促すために知っておくべき情報のひとつです。

リファラを分析することで、お客様の自己解決を促すための施策が見えてきます。

【施策例】
問い合わせ前のリファラが、サポートサイトのトップページであるお客様が多い。そこで、サポートサイトのトップページの目につく場所に「〇〇についてはこちら」のようにお客様の疑問の回答が書かれた記事のリンクを設置する。そうすることで、お客様はサイト内を探し回ることなく、求めていた情報にたどり着ける。

ハイレベルサイトマップ

ハイレベルサイトマップは、サイト構造を可視化するための地図のようなものです。通常のサイトマップと違い、目的に合わせて特定のページ群だけをマッピングしています。

下記のハイレベルサイトマップは、ECサイトにおいて「お客様の自己解決を促すための施策を考えるため」に作ったものです。

ハイレベルサイトマップを作ることで、サイト構造を鳥の目で広く視認でき、自社サイトの改善ポイントや目的達成のための施策を考えられます

>>vol.08 お客様の自己解決を促す、サポートサイトの改善点を見つける方法

FAQ

FAQ(Frequently Asked Questions)は、"よくある"質問のことです。

Q&Aとの違いは「質問の頻度」にあります。

  • Q&A:あらゆる質問と回答をまとめたもので、頻度は関係ない
  • FAQ:寄せられる頻度が高い質問とその回答をまとめている

サポートサイトにFAQを掲載しておくことで、お客様が問い合わせることなく疑問を解決できるようになります。その結果、電話やメールなど人が対応する必要がある問い合わせを減らし、CSコストの削減に貢献します。

wiki

wikiは、ブラウザ上で簡単にWebサイトを作成するシステムのひとつです。実際はノウハウや制度などを説明する社内wikiなどとしてよく使われます。

特徴は、不特定多数の人が閲覧・更新できること。Wikipediaはwikiの代表的な例です。

由来はハワイ語の「wikiwiki」で、速いという意味があります。

SEO

SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)は、集客において重要な手法です。あるWebサイトのページで集客を目指す際に、特定のキーワードで検索されたときの検索結果の上位に表示されるよう、あれこれ施策を行うことをSEO対策と呼びます。

CSには関係ないと思うかもしれませんが、サポートサイトを運営するなら最低限は知っておくべき手法です。

過去に、サポートサイトのリニューアルで、SEOを知らずに失敗した事例があります。

ある企業では、サポートサイトのリニューアルの際にドメインを変更しました。

▼ドメインとは?
インターネット上の住所のこと。サイトのURLである「https://cs-mag.karte.io/」のなかの「karte.io」の部分を指す

このときにリダイレクトなどSEOを考慮した施策を行わなかったため、古いドメインのサポートサイトが、検索結果に表示され続けてしまったのです。

その結果、お客様が古いサポートサイトを参考にしてしまい、CSへの問い合わせが殺到する事態になってしまいました。

他にも、SEOについての知見がないことが原因で、サポートサイトの目標達成に向けたKPI設定に失敗してしまうケースがよくあります。詳細は下記記事で紹介しています。

>>vol.11 サポートサイトにおけるKPI設定の落とし穴

CXに関する用語

  • CX(Customer Experience)
  • 自己解決
  • カスタマージャーニーマップ
  • UI/UX
  • ロイヤルカスタマー
  • サイレントカスタマー

CX

CX(Customer Experience)は、「顧客体験」や「顧客体験価値」と表現する指標のことです。商品やサービスの品質だけでなく、購入までの過程や使用感、使用後のフォローなど、購入前後のフローも含めた顧客体験を表します。

このCXに大きく関わるのが、CSです

例えば接客を伴わない事業の場合、CSこそがお客様とコミュニケーションを取れる貴重な存在ですよね。つまり、CSはお客様に対して商品の品質以外の価値を提供でき、CX向上に貢献できる部門ということです。

もちろん、接客を伴う事業でも、CSはお客様とコミュニケーションを取れる貴重な存在であることは変わりません。そのため、CSの対応によってCXが上がることもあれば、下がってしまうこともあります

自己解決

自己解決とは、有人サポートに頼らず、ユーザーが自分自身で解決することです。例えば、電話や有人チャットのように、人が対応することでお客様の疑問を解消する手段は、自己解決とは言えません。

【自己解決の例】

  • サポートサイトのFAQを見て疑問を解決できた
  • AIチャットボットを使って疑問を解決できた

CSにとって自己解決は非常に重要です。

自己解決を促せれば、人が対応しなくて済みますよね。そのため、サポートのコストを圧縮できますし、問い合わせに対応する従業員の負担を軽減できます。

自己解決の成功事例は下記記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

>>vol.02 簡易事例編

カスタマージャーニーマップ

カスタマージャーニーマップ(CJM:Customer Journey Map)は、お客様が商品・サービスを知ってから、その商品・サービスを利用するまでの体験や感情を時系列に沿って可視化したものです。

カスタマージャーニーマップを作ることで、お客様が自社の商品・サービスと接したときの行動や感情がわかり、お客様にとって「改善やサポートが必要なタイミング」を把握できます

また、数ある施策の優先順位をつける際に、カスタマージャーニーマップが役立ちます。

作り方は下記記事で解説しているので、合わせてチェックしてみてください。

>>vol.13 カスタマージャーニーマップの作り方

UI/UX

UI(User Interface:ユーザーインターフェース)はお客様と製品やサービスとの接点のこと。ざっくり言うと「見た目」のことです。

例えば、パソコンやスマートフォンといったデバイス、アプリケーションやWebサイト、Webサイトにおけるページデザインやフォントなどを指します。

UX(User eXperience:ユーザーエクスペリエンス)は、お客様が商品やサービスを使って得られる体験のことです。

  • UI→iPhoneに映る画面一つ一つ
  • UX→iPhoneで快適な調べものができること

UIとUXには密接な関係があります。UIが悪いとUXの評価が下がってしまうのです。

【例】
サポートサイトの文字が読みにくい(UIが悪い)ため、お客様が自分の探している情報を見つけられない(UXの評価が下がる)。

UXの評価を上げるためには、お客様にとって使いやすいUIが欠かせません。そのため、サポートサイトの設計・リニューアルのときには、UIやUXを意識する必要があります

ロイヤルカスタマー

ロイヤルカスタマーとは、企業やブランド、商品、サービスに対して、愛着や信頼を持ってくれているお客様のことを指します。いわゆる、熱狂的なファンやヘビーユーザーのことで、高単価であることが特徴です。

CSにとって、ロイヤルカスタマーは諸刃の剣のような存在であることを知っていますか?

なぜかというと、愛着心が強いお客様ほど、一度のサポートの失敗で自社の製品・サービスを使ってくれなくなることがあるためです。

ロイヤルカスタマーを獲得する努力に加えて、離さないための取り組みも欠かせません。

サイレントカスタマー

サイレントカスタマーとは、静かに離脱するユーザーのことです。

例えば、「会員登録ができず、調べても解決できないし電話するのも面倒だから、会員になるのをやめる」というユーザーを指します。

実は、カスタマーサポートに寄せられる問い合わせの割合は4%ほどで、残りの96%の困りごとは放置されています。つまり、困りごとが発生した96%のお客様はサイレントカスタマーである可能性が高いのです。

企業にとっては、何が原因かもわからず、多くのユーザーが静かに離れているということになります。

CSにおいてお客様の自己解決を促すためには、サイレントカスタマーを減らすためにどうしたらいいかを考えることも重要です。

参考:vol.01 定義・総論編

ビジネス用語

  • オンボーディング
  • リード
  • リテンション率
  • アップセル/クロスセル

オンボーディング

オンボーディングとは、お客様に対して、いち早くサービス・製品の使い方や機能に慣れてもらうプロセスのことです。新入社員が会社に早く馴染めるような取り組みのことも指します。

企業にとってオンボーディングは非常に重要です。

サービスの利用を開始したお客様に「使いにくい」と思われてしまうと、使い慣れる前に離脱してしまうかもしれないですよね。また、悪い口コミにつながる恐れもあります。

反対に、お客様がすぐに使いこなせれば、自社のサービスや製品を長く利用してもらえる可能性が高くなるうえ、良い口コミにつながるかもしれません。

CSは、オンボーディングの一環として、「お客様が製品やサービスをすぐに使いこなせるようサポート」することで、売上に貢献できます

リード

リードとは見込み顧客のことです。多くの場合、連絡先(メールアドレス、電話番号)がわかり、こちらから連絡が取れる顧客を指します。

とはいえ、どの段階でリードと呼ぶかは企業や部門によってさまざまです。「自社製品やサービスを知っている」「自社製品やサービスに興味がある」という状態でリードと呼ぶこともあります。

そのため、企業内で「リードはどんな顧客のことなのか」をはっきりしておきましょう。

リテンション率

リテンション率とは、「定着率」や「継続率」のことです。

反対に、解約率のことを「Churn Rate(チャーンレート)」と言います。

詳しくは下記記事で解説しているので、合わせてご覧ください。

>>サポート基礎No.01 CS担当者が知っておきたい主な指標

アップセル/クロスセル

アップセルは顧客の単価を上げる手法、クロスセルは既存のお客様や商品を購入しようとしているお客様へ別の商品も購入してもらう手法です。

【例】

  • アップセル:Wi-Fiの回線を利用してくれているお客様へ、より回線速度が高い上位プランに移行してもらう
  • クロスセル:スマートフォンを購入してくれた・購入しようとしているお客様へ、ケースや画面保護シールもセットで購入してもらう

CSが事業へ貢献するためには、アップセルやクロスセルの意識が必要です。

例えば、お客様から寄せられる問い合わせに対して、上位プランや付属商品を勧めて問題を解決できれば、売上に貢献できます。

業務遂行には直接関係ないもののCSなら知っておきたい用語

ここからは、業務で使う用語ではないものの、CS担当者が知っておきたい下記の用語を紹介します。

  • CRM
  • MAツール
  • SFA
  • CTI
  • PBX
  • IVR
  • SaaS
  • テックタッチ
  • BtoB/BtoC

CRM

CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)とは、お客様の顧客情報やコミュニケーション情報を管理することです。一般的には、ツールを使って管理します。

【CRMで管理する情報の例】

  • どの商品を買っているか?
  • 何度目の購入か?
  • どのコースを契約しているか?
  • どのようなチャネルでどのような問い合わせが寄せられたか?

CSにとってCRMツールは非常に重要です。

CRMツールがあることで、問い合わせがきたときにお客様情報に最短でアプローチでき、過去のやりとりや最新情報(契約情報など)を把握できます。その結果、顧客に対してスムーズに対応できるうえ、問い合わせ内容を素早く記録できるのです。

▼CRM機能が強い代表的なツール

  • Salesforce Service Cloud
  • FastHelp5
  • Zendesk

MAツール

MAツール(マーケティングオートメーションツール)は、新規顧客獲得のためのマーケティング施策を管理・効率化・自動化するツールのことです。

CSには関係ないと思うかもしれませんが、CSでもMAツールで管理している顧客情報を使うのがおすすめです。

MAツールには、顧客とどのように接してきたか(メールのやり取りや問い合わせ履歴など)が管理されています。そのため、CSがMAツールに貯まっている顧客情報にアクセスできれば、どのようなお客様なのかを把握したうえで問い合わせに対応できます。

また、1人の顧客に対して、マーケティングの部門とCS部門でそれぞれメールを配信していると、配信数が多く顧客にとっては迷惑に感じる人もいるはずですよね。MAツールをCSでも使い顧客情報を一元管理することで、「マーケ部門で●件以上のメールを配信している顧客へは、CS部門から新たにメールを配信しないようにする」というような管理ができます。

SFA

SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)は、営業部門が持つ情報をデータ化し、蓄積・分析するシステムです。顧客管理、案件管理、商談管理、行動管理などを管理できます。

CRMやMAツールと似たようなシステムなうえ、ひとつのツールでCRM、MA、SFAを包含してることもよくあるので、違いがわからない人も多いのではないでしょうか?

そこで、CRM、MA、SFAの違いを解説します。

CRM、MA、SFAの違い

CRM、MA、SFAの違いは、それぞれのツールの目的にあります。

  • CRM:既存顧客との関係構築を目的とする
  • MA:見込み顧客の獲得や管理を目的とする
  • SFA:営業活動の支援として顧客獲得を目的とす

各ツールで目的は異なりますが、お客様へ最適なアプローチを行うために顧客情報を管理するという部分は共通しています。

CSにおいてはCRMツールを使うのが一般的で、MAツールやSFAとも連携しながら、他部署と顧客情報を共有するのがおすすめです。

また、前述した通りCRM、MA、SFAのすべての機能を持つツールもあります。例えばSFAとして有名なSalesforceは、CRMやMAの機能群も備わっています。

CTI

CTI(Computer Telephony Integration)は、電話やFAXとコンピューターをつなげるシステムのことです。電話システムのコア的なイメージで、各システムを連携させる役割があります。

CSにおいて必須のシステムで、CTIが動かなくなると現場は大混乱に陥ること間違いありません。

CTIは、受電した際にオペレーターの空き状況を確認したうえで、電話を振り分けます。そのため、CTIが動かなくなると、電話の振り分けができません。

また、CTIがあれば受電時に顧客情報をパソコンの画面へ表示してくれるため、オペレーターがスムーズに対応できるようになります。

▼代表的なCTIシステム

  • Amazon Connect
  • BIZTEL

PBX

PBX(Private Branch Exchange)は、電話交換機のことです。

複数の電話回線を集約し、内線同士をつなげたり、内線と外線をつなげたりする役割を持っています。

IVR

IVR(Interactive Voice Response)は、音声自動応答システムのことです。

電話をかけた際に「〇〇の方は1を、××の方は2を、△△の方は3を〜〜〜」という自動音声を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。この自動音声を流すために必要なのがIVRです。

CTIシステムの機能として組み込まれていることも多くあります。

SaaS

SaaS(Software as a Service)とは、サービスを提供している側で稼働しているソフトウェアを、利用者がネットワーク経由で利用するサービスのことです。

ここまで紹介したCRMやMAツール、SFAもSaaSのサービスがあり、CSにおいて欠かせないサービスとなっています。

CSで使われる代表的なSaaSには、以下のようなツールがあります。

例:Microsoft365、Salesforce、Amazon Connect、Looker、Domo、KARTE RightSupport

テックタッチ

テックタッチとは、テクノロジーを活用し、より多くのお客様に対してツールやサービスの活用を支援する施策のことです。

CSにおけるテックタッチには、お客様がサービスや商品の利用でわからないことが発生した際に、テクノロジーを使い自己解決を促すというものがあります。

【例】

  • マイページでサービスのの使い方を説明するチュートリアル動画を作る
  • チャットボットで自己解決を促す

マーケティングにおいては、オンラインだけで顧客を獲得する手法のことをテックタッチと呼びます。

BtoB/BtoC

BtoB(Business to Business)は、企業が企業に対してモノやサービスを提供するビジネスモデルのこと。BtoC(Business to Customer)は、企業が一般の消費者に対してモノやサービスを提供するビジネスモデルのことです。

【例:スマホ販売の場合】

  • BtoC→個人にスマホを購入してもらうビジネスモデル
  • BtoB→企業に社用スマホとして購入してもらうビジネスモデル

おわりに

今回は、CS担当者が知っておくべき用語をまとめました。次回は「CSがどのように売上に貢献できるか」について、事例を交えながら紹介する予定です。

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サポート基礎No.03 CSにおける顧客満足度と売上の関係

#カスタマーサポート
#顧客満足度
#CX

実はCSは、売上に貢献できるポテンシャルが強い役割です。購入前のお客様の不安や疑問を解消することで、直接的に売上に貢献できますし、お客様の声を営業や開発部門にフィードバックできれば、間接的な売上貢献もできます。ただし、問い合わせ対応で顧客満足度を下げてしまうと、売上も下がってしまうため注意が必要です。顧客満足度を下げないためには、常に期待通りの対応をすることが大切です。

CSの業務は、直接的にも間接的にも、企業の売上に貢献できます。しかし、一歩間違えると、顧客満足度を下げ、お客さまが離れてしまう原因にもなりかねません。

本記事では、

  • CSがどのように売上に貢献できるのか

  • 顧客満足度を下げないためにはどうすればいいか

を中心に、CS担当者が知っておきたいスタンスの話をご紹介します。

CSのサポートによって顧客満足度の低下を防いだ事例も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

CSは取り組み方によって売上に貢献できる

CSが売上に貢献できる代表的な例が、「購入前や契約前のお客様の疑問や不安を解消する」という取り組みです。

実店舗での買い物や契約の場合は、そこで働く従業員に質問すれば、簡単に疑問を解消できます。従業員から困っていそうなお客様へ声をかけ、お客様の疑問を解消することもできますよね。

しかし、Web上では、お客様が問い合わせないと疑問が解消できないケースが多いです。「購入前のお客様の疑問や不安を解消するコンテンツ」が用意されていないと、お客様はわざわざ電話やメールなどで問い合わせなければなりません。ところが、お客様はそこまではしてくれず、「他のわかりやすいサイトで買おう」となってしまいます。

こういったシーンで、お客様の疑問や不安を解消し、次のプロセスへの後押しをできるのがCSです。例えば、「FAQ」や「チャットサポート」を用意し、適切な動線を設置することで、購入・契約前のお客様の不安や疑問を解消し売上につなげられます。

さらに、直接的な売上貢献だけでなく、間接的にも売上に貢献できます。

間接的な売上貢献もCSの役割

CSは「事業を成長させるヒントの山」であることを知っていますか?

CSには、お客様からさまざまな内容の問い合わせが寄せられます。お客様が問い合わせているということは、自社の製品やサービスを利用するうえで、何かに困っているはずですよね。

つまり、CSには「お客様がつまずくポイント=自社の課題」が集まっていると言えます。

お客様へのアンケートなどを実施せずとも、自社の課題は問い合わせという形でCSに集まってくるのです。また、多くのお客様の声が集まっていれば、偏った意見ではなく、お客様の声の傾向がわかるのもCSの強みです。

個人的な話になるのですが、過去には「センター行脚」と銘打って、全国のコールセンターを回ったこともあるほど、CSには貴重な意見が蓄積されています。

CSで受けた問い合わせを、営業や開発部門へフィードバックできれば、間接的に売上に貢献できるというわけです。

注意点:サポート品質を高めて売上を伸ばすのは難しい

CSのサポート品質を高めることで、売り上げを伸ばすことができるのか?

意外な事実ですが、経験上、サポートの品質が高いからといって、売上の向上に直結することはほとんどありません

ユーザーの視点で考えると、サポートの品質は高くて当たり前ですよね?「質問すればすぐに解決する」「親身になって話を聞いてくれる」というのは、当然のことだと思っている人が多いと思います。

つまり、どれだけ丁寧に対応してもそれが当たり前だと思われてしまうため、「解約しない」「たくさん購入する」とはなりにくいのです。

反対に、問い合わせへの対応の品質が悪いと、お客様は簡単に離れてしまいます。なぜなら、「ちゃんとした対応」が当然であって、そうでない対応は強いストレスになるからです。

もちろん、問い合わせに対応するすべてのスタッフが、常に120点の対応をできるのが理想ではあります。しかし、そのためには、雇用や教育に多くのコストや時間がかかってしまうものです。

そこで、まずは120点のサポートではなく、常に80点以上のサポートがおこなえる環境を目指しましょう。

CSにとって大切なのは顧客満足度を下げないこと

CSにとっては「顧客満足度を上げることよりも下げないこと」の方が重要です。

その理由は、CSにおいて顧客満足度を上げても売上は上がりにくい一方で、顧客満足度が下がると売上も下がってしまうためです。

「顧客満足度が高いと、売上やLTV(ライフタイムバリュー)が伸びる」とよく言われていますが、実際に調べてみると相関関係はないことがほとんど。

一方で、逆は言えてしまいます。つまり、顧客満足度が低いと、売上やLTVが減ってしまうということです。

ブランドへの愛着心が強い人ほど一気に離れやすい

特に注意が必要なのが、ブランドへの愛着心が強いファン(熱狂的な信者)への対応です。

愛着心が強いお客様は、企業が努力しなくても自社の商品やサービスを買ってくれます。

わかりやすい例が、Apple製品の熱狂的なファンです。

Appleへの愛着心が強い人は、スマートフォン、タブレット、パソコン、時計...はたまた音楽や動画配信サービスまで、さまざまな分野でApple製品を使ってくれます。スマートフォンに関しては、新しいモデルが発売されるたびに購入する人もいるほどです。

しかし、少しのきっかけで一気に離れてしまう可能性があることを肝に銘じておく必要があります。

例えば「新しいパソコンを買ったのに1週間で壊れてしまい、電話したけど自分のせいにされた」みたいな経験があると、Apple全体を嫌いになり、スマホや時計も使ってくれなくなる恐れがある、ということです。

さまざまな製品を利用してくれているうえ、新商品が発売されるたびに購入してくれるお客様が離れてしまうのは、企業にとって大きな損失ですよね。

では、このようにお客様が離れてしまうのを防ぐためには、どうしたらいいのでしょうか?

顧客満足度を下げないためには「普通のことを正しくやる」

顧客満足度を下げないために重要なのは、普通のことを正しくやることです。

問い合わせているお客様が求めているのは、

  • 電話をかけたらすぐにつながる
  • スムーズにわかりやすく答えを教えてくれる
  • 適量の(過不足なく)情報を教えてくれる

といったことのはずですよね。

つまり、過剰な丁寧さやサービス精神ではなく、「正しいことを端的に伝える」「マナーが備わっている」という、CSにとって当たり前のことが重要です。

また、顧客満足度を下げないためには、「サポートを受けるお客様にとって、問い合わせは面倒である」という意識も持っておく必要があります。

問い合わせているお客様は、自分で解決方法を調べたもののわからず、わざわざ電話し、オペレーターが応答するのを待っています。そのため、「1つの問い合わせに対して、最低でも1時間はお客様の時間を奪っている」という意識を持って問い合わせに対応するようにしましょう。

「応答までにお客様を5分も10分も待たせる」「担当への取次や事実確認のために保留で待たせる」というお客様にとっての不利益は避けなければなりません。

繰り返しになりますが、顧客満足度を下げないためには、「電話にすぐ出る」「お客様が求める情報を端的にわかりやすく伝える」という当然のことを常に実践することが大切です。

CSのサポートによって顧客満足度の低下を防いだ事例

CSのサポートによって顧客満足度の低下を防いだ事例として、アパレルのECサイトを運営する企業を紹介します。

この企業のCSには、配送日についての問い合わせが多く寄せられていました。その原因は「配送がいつになるか」という情報がサイトになかったことです。

そこで、ECサイトのFAQに「配送日についての情報」を追加することに。具体的な配送日は在庫状況などによって変わるため明記できない旨と、「何日ごろに届く」という目安を提示しました。

その結果、いつ届いてもいいと思っているであろう高齢のお客様の売上は増加。その一方で、「この日に欲しい」という希望があるであろう若い人の売上が減少しました。

若者分の売上が減っている部分が気になりますが、購入をやめた人は、欲しいときに届かないため購入後にキャンセルする可能性があります。

つまり、「購入したけど欲しい日に届かない」という、お客様の満足度が下がる出来事を防止できたのです。加えて、「なんで届かないんだ」という問い合わせも防止でき、その問い合わせ対応のコストが削減できました。お客様と企業の両者の不幸を同時に防げたといえそうです。

この事例のように、CSは売上に貢献できるだけでなく、将来のお客様になるかもしれない人が離れてしまうのを防ぐ役割も担っています

おわりに

今回は「CS担当者が売上に貢献できるか?」について、事例とともにご紹介しました。次回は「CSにおけるコストの考え方」について紹介する予定です。

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サポート基礎No.04 CSがコスト削減の対象となりやすい問題とその対策

#カスタマーサポート

なぜCSのコストは削減の対象になりやすいのか?その理由は、どのように企業の利益へ貢献しているかが見えにくいためです。つまり、CSのコストを必要以上に削減されないためには、CSの事業貢献をアピールする必要があります。また、コストの削減が避けられない場合は、顧客満足度を下げないような施策を考えなければなりません。

CSは、コスト削減の対象となるケースが非常に多いです。その結果、顧客満足度の低下につながってしまうことも珍しくありません。

では、なぜCSがコスト削減の対象となってしまうのでしょうか?また、顧客の満足度を下げずにCSのコストを削減する方法はないのでしょうか?

本記事では、CSがコスト削減の対象となりやすい理由を掘り下げて解説したうえで、顧客満足度を下げずにCSのコストを削減する方法をご紹介します。

CS担当者なら知っておきたい「CSのコストに対する考え方」をまとめているので、ぜひ最後までご覧ください。

なぜCSのコストは削減の対象になりやすいのか?

なぜ、CSのコストは削減の対象となることが多いのでしょうか?

その理由は、大きく2つあります。

  • 売上や利益への貢献を判断する基準がない
  • CSの運営コストと顧客満足度や売上への関係がわかりにくいい

売上や利益への貢献を判断する基準がない

前提として、CSの運営には、設備費や人件費などのお金がかかっています。サービスの開発や改善より費用がかかっているケースもあります。

それなのに、CSはどのように企業の利益へ貢献しているかが見えにくいですよね。

そもそも、利益や売上に貢献しているか判断するための基準がない企業も多いのではないでしょうか。すると、「コストがかかる割に利益や売上に貢献していない」と思われてしまうのです。

中には、お金がかかってるだけの「コストセンター」だと見られているCSもあるでしょう。

このようにコストセンターだと思われているCSは、コスト削減の対象となってしまうことが多いです。

CSの運営コストと顧客満足度や売上への関係がわかりにくい

CSは、「コスト削減によって顧客満足度や売上にどう影響するか」がわかりにくい部門でもあります。

企業全体で見ると、製造や開発にかかる費用を減らすのも選択肢のひとつです。しかし、製造やサービスの開発コストを削減すると、品質が悪化して顧客満足度や売上の低下につながりそうだと簡単に想像できます。

例えば、洋服の製造において、原材料である繊維を安いものに変えた結果、伸びやすくなってしまったという具合です。

一方CSの場合、コストを削減してどのように顧客満足度や売上が下がるか、相関関係を示すのが難しいという側面があります。

例えば、電話の問い合わせがそれほど多くない場合、オペレーターの数を減らしても大丈夫だろうと考えることは少なくありません。

事実、お客様への応対品質が上がり顧客満足度が上がっても、売上にはそれほど影響がないケースも多いです。しかし、応対品質が下がり顧客満足度が下がると、売上も下がってしまう傾向にあります。

しかし、このような傾向を知らないと、「まずは感覚的にマイナスの影響が少なそうなCS部門のコストを削減しよう」と考えがちです。その結果、CSがコスト削減の対象となってしまいます。

とはいえ、CSは利益に貢献していないわけではありませんし、顧客満足度や売上にも大きな影響を与えているはずですよね。

CS側が「金食い虫」みたいな扱いをされたくないのであれば、きちんと事業に貢献し、それをアピールする必要があります

では、CSが事業に貢献するには、どのような方法があるのでしょうか?

CSが事業に貢献する方法

まず考えられるのは、サポートの中で「他の自社商品を購入してもらう」「ランクが高いプランに移行してもらう」といった方法、いわゆるアップセル・クロスセルです。

CSが営業のような役割も担えれば、利益に直接貢献できます。

また、既存顧客がサービスを使い続けてくれている要因のひとつに「カスタマーセンターのサポート」があれば、CSが事業に貢献しているといえますよね。

例えば、

  • CSのサポートがあったからサービスの利用を始められた(初期の離脱を防いだ)
  • わからないことがあってもすぐに解決できるから安心して使える
  • サポートがよかったから、家族や友人にすすめようと思った

といったお客様がいれば、CSが事業に貢献できています。

このような直接的ではない事業への貢献は、どのように把握すればいいのでしょうか?

次章では、CSの事業貢献を見える化する方法をご紹介します。

CSが事業に貢献できているかを判断する方法

CSが事業に貢献できているかを判断する方法として、「ユーザーアンケート」が挙げられます。

アンケート結果をクロス分析することで、CSのサポートがお客様の行動にどう影響し、事業に貢献できているかが見えてきます

【クロス分析とは?】
複数の項目のアンケート結果を掛け合わせて分析していく手法のこと。

具体的には、

  • 継続意向:今後も使い続けたいか
  • 推奨意向:友人や家族にすすめたいか
  • サポート経験の有無:サポートを受けたか(受けた場合は対応が良かったか)

の3つの項目をアンケートで調査し、その結果を分析することでCSが事業に貢献しているかを評価できます。

なお、アンケートとクロス分析は、数ヶ月に一度のように定常的に実施し、推移を追うのがおすすめです。そうすることで、CSが事業に貢献し続けていることがわかります。

アンケート調査や分析の方法は、下記で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。

>>vol.06 クロス分析を実施しカスタマーセンターの事業貢献を定量で把握する 

CSのコストを削減することのリスク

「クロス分析でCSの事業貢献が認められたものの、依然としてコスト削減の対象となっている」

「クロス分析の結果、CSがあまり事業に貢献できていなかった」

このように、CSのコスト削減が避けられないケースもあるでしょう。

そんなときに把握しておきたいのが「考えなしにCSコストを下げるのは大きなリスクがあること」です。安易にCSコストを下げるためだけの施策に取り組むと、お客様の満足度を下げ、顧客離れにつながってしまうことがあります。

【例】
オペレーターの数を減らした結果、電話がつながりにくくなり、お客様の不満が募ってしまった。その結果、解約するお客様が増えたうえ、「電話をしてもつながらない」という口コミが多くなり、新規顧客の獲得にも悪い影響を与えてしまった。

そもそも理想は「顧客満足度を下げずに(むしろ顧客満足度を上げながら)、CSにかかるコストを下げる」ことですよね。

では、どのようすれば顧客満足度を下げずにCSコストを削減できるのでしょうか?

顧客満足度を下げずにCSコストを削減する方法

顧客満足度を下げずにCSのコストを削減するには、次のようなことを考える必要があります。

  • 電話よりも低コストで問い合わせに対応できないか?
  • お客様が問い合わせなくても疑問を解消できないか?
  • 問い合わせ後の後処理を簡略化・効率化できないか?

重要なのは「お客様にとって本当に必要なサポートを充実させる」ことです。

つまり、電話での問い合わせを減らすために、電話番号をわかりにくいところに記載するといった施策は当然NGです。

電話でないと解決できない悩みを持つお客様に対しては、簡単に電話番号がわかり、すぐに電話がつながり、迅速かつ過不足なく解決方法を提示できる体制を整える必要があります。

一方で、電話ではなくても解決可能な悩みは、人が対応しなくても解決できる仕組みを整備します

【例:サポートサイトにFAQをそろえ、動線を整える】
お客様がサポートサイトを見て疑問を解決できれば、人が対応する必要がなくなるため、オペレーターの数や設備の数を減らし、コストカットできる。お客様にとっても、わざわざ電話をかけずに疑問が解消できるというメリットがある。

このように、お客様が自分で解決できる内容の電話を減らせれば、顧客満足度を上げながらCSにかかるコストを削減できます。

より具体的な方法や考え方は、CSmag「カスタマーサポート準備編」で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。

>>カスタマーサポート準備編

おわりに

CSのコストは、闇雲に削減すると顧客満足度を下げてしまうリスクがあります。コストの削減を避けられない場合は、本記事で紹介したように、顧客満足度を下げないようコスト削減に取り組みましょう。

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サポート基礎No.05 VoC概論

#VoC
#CX

製品やサービスの改善・開発のために、多くの企業が取り組んでいる「VoC(顧客の声)の活用」。しかし、多くの企業はVoCを有効活用できていません。「効果が大きそうな多数派の意見だけ抽出する→多数派の意見はすでに認知している→VoCが役に立たないと判断される」というケースが多いです。VoCを活用するためには、多数派以外の声からも「自社で把握していない課題やニーズがないか」を見つける"探索"が必要になります。

お客様のニーズを取り入れ、製品やサービスの改善・開発に役立てようとする取り組みである「VoC活用」。

このVoC、実は「宝の山」です。うまく活用できれば、お客様のニーズに合わせた製品やサービスの開発・改良につながります。

しかし、多くの企業は宝の山であるVoCを効果的に活用できていません。

今回は、

  • なぜVoCが効果的に活用できないのか?
  • VoCを効果的に活用するにはどうしたらいいか?

についての考察をまとめました。

そもそもVoCとは?

VoC(Voice Of Customer)とは、直訳すると「顧客の声」です。

【VoCの例】

  • カスタマーサポートに寄せられた問い合わせ
  • 接客中に寄せられた意見
  • アンケートで集めた意見
  • インターネットやSNSへ投稿された口コミ

これらのVoCには、「サービスの改善や製品の企画のためのヒント」が隠されています。お客様の要望を取り入れれば、お客様のニーズに合った製品やサービスが作れるはずですよね。

このVoCの活用方法は、大きく2通りあります。

VoCを活用する2通りの方法

VoCを活用する主な方法には2通りあります。

  • 仮説確認のためにVoCを使う
  • VoCから役立ちそうな意見を探す

基本は仮説を立ててVoCを使うのがおすすめです。仮説を立ててからVoCを分析することで、「仮説が正しいなら施策を考える、間違っているなら別の仮説を考える」 という次のアクションにつなげやすくなります

とはいえ、仮説確認のためのVoC活用だけだと、自分たちの思考の枠を超えられません。自分たちでは思いつきもしなかった的を得た意見(これこそが宝)を見つけるためには、「VoCから役立ちそうな意見を探すこと」も必要です。

しかし、「VoCから役立ちそうな意見(宝)を探し活用すること」は簡単ではありません。

それはなぜか。

VoCから宝を探し出せない理由

限られた時間・予算で自社のサービスや製品を良くするためには、どの意見を取り入れるのか取捨選択しなければなりません。そこで、どの意見から取り入れるか、優先度付けが必要となります。

その際によくあるのが、「多くのお客様が挙げている声を取り入れた方が効果が大きそう」と考え、多数派の意見をピックアップして少数派の意見は流すといった方法です。

しかし、この方法こそが落とし穴。「VoCを効果的に活用できなくなる悪循環」につながってしまいます。

VoCを有効活用できなくなる悪循環

「とりあえず多数派の意見をピックアップして、少数派の意見をほとんど流す」

このような形でVoCを活用しようとすると、社内でVoCの価値が下がってしまう可能性があります。

それはなぜか?

多数派の意見は「自社ですでに把握しているものばかり」で、参考にならないことが多いためです。

多くのお客様が指摘することは、下記のような内容であることがほとんどです。

  • すでに改良を進めている
  • 新しいモデルで採用している
  • そういう要望があるのは知っているけど、技術的・予算的に難しい

すると、多数派の意見をピックアップするだけでは、参考になるVoCが残りません。お客様の声はたくさん集まっているものの、自社で把握している意見ばかりが社内で共有されてしまいます。この状況が続くと、社内全体で「VoCには大した情報がない」という空気感になってしまう恐れがあります。

とはいえ、VoCは重要だと"言われて"いるため「一応VoCを集めておこう」というスタンスになる。そして「多数派の意見をピックアップし、少数派の意見は流す」を繰り返す。

これでは、VoC活用自体が意味のない無駄な作業になりかねません。

ではどうすればいいか?

VoCを有効活用するためには、「多数派の意見だけでなく、少数派の意見にも目を向けてお宝を探すこと」が重要です。

少数派の意見を取り入れた成功例

当社が少数派の意見を取り入れてVoC活用に成功した事例をひとつご紹介します。

当社のKARTE RightSupportは、顧客の問い合わせ前の行動を可視化することで、顧客に負担のかからないWebサポートを提供するプロダクトです。

このプロダクトをカスタマーサポート向けに提供していた中で、マーケティングにも活用してくれるお客様が出てきました。それが、キラメックス株式会社様です。

キラメックス様から得られた示唆。それは「マーケティングで使うにはどんな機能があったら便利か?」という視点でした。

改めてですが、KARTE RightSupportはあくまでもカスタマーサポート向けのツールです。そのため、マーケティングに使おうという発想は当時は少数派でした。

しかし、よく考えれば当社の機能はマーケティングにも使えます。例えば、ファッションECのLPで、お届け日のセクションまでスクロールしてから「戻る」を押しそうになったお客様にポップアップで「お届け日についての情報」を出す、という具合です。

つまり、LPで成果を出すために、お客様が不安に思っていることを、ピンポイントで取り除く。そのために、お客様の行動に合わせて、疑問に思っていそうなことをウィジェットで提示する。このような使い方ができます。

当時「多数派の意見をピックアップして、少数派の意見をほとんど流す」という作業をしていたら、見落としていたかもしれません。

このように、少数派の意見には、製品やサービスの可能性を広げられる貴重な声があるはずです。

では、VoCから製品やサービスの改善・開発につながる意見を見つけるためにどうすればいいのでしょうか?

VoCの効果的な活用のポイントは"探索"

VoCを上手に活用するために重要なのが「一次仕分け」です。

前述の通り、「とりあえず多数派の意見をピックアップして、少数派の意見をほとんど流す」という作業ではVoCを効果的に活用できません。「VoCの中から役に立ちそうな意見を探す」という"探索"に力を入れるべきです。

探索のためには、「この声は会社にとって有益か?」「ビジネスの種として有用か?」を判断する能力が欠かせません。

VoCを軽視している会社において、この仕分けは新人や経験の浅い社員が担当しがちですが、探索するためには「会社のことをよく知っていて、ビジネスのセンスが養われている人」が担当する必要があります。

実際に担当者はどうすればいい?

では、カスタマーサポートとしてどのように取り組めばいいのか?

まずは、これまでのVoC活用業務のやり方が正しいかを見直しましょう

「ツールを使って多数派の意見をリストアップし、エクセルで管理しつつ少数派の意見は弾く」という作業になっているなら、やり方を変えるべきです。

「ツールを使って多数派の意見をリストアップ」という工程はこのままで問題ありません。「やっぱりこういう意見が多いよね」という再確認になりますし、多数派の意見の中にお宝がある可能性もあります。変えるべきは、「少数派の意見をすべて流す」という作業です。多数派ではない意見の中から「新しい視点の声」を見つける工程を加えることで、お宝を探し出せます。

VoCを活かす方法も考えられるのが理想

VoCを仕分ける際は、改善策や防止策を考えることも大切です。

お客様の声をただまとめるよりも、その声をどのように活かせるかをセットでまとめた方が価値があると思いませんか?

VoCに対する改善策・防止策・抑止策を考えることで、新しい視点の声が見つかりやすくなりますし、多くの意見が一つの施策で解決しそうなことに気づけることもあります。そして、見つけ出した面白い声や改善策・防止策を、多数派の意見とともに他の部署へ共有することで、少しずつ「VoCにも面白い意見が含まれている」という認識に変わっていくはずです。

現経営層へVoCの有用性を共有し、自分たちの存在意義を伝える

VoCの探索に充てるリソースが足りなかったり、会社のことをよく知っていてビジネスのセンスが養われている人がいなかったりと、VoCの仕分け方法を変えられないケースもあると思います。

そのようなときに試したいのが「経営層に対してのVoCの重要性を伝える」という方法です。

「VoCにこういう面白い意見が集まっている」「それを開発にもFBしている」ということをアピールできれば、「だから予算を増やしてほしい、優秀な人員を増やしてほしい」といった交渉につなげられます。

その際、顧客からの問い合わせに応対しているオペレーターの意見を集めるのがおすすめです。

オペレーターは最前線でお客様と対峙しているため、さまざまなVoCを把握していることが多いです。さらに、自社の製品やサービスについて詳しい人が多いため、「ここを直したら良くなるのに」という的を得た意見を持っているケースもよくあります。

経験上、オペレーターの意見は経営層に興味を持って聞いてもらえることが多いため、一度試してみてはいかがでしょうか。

オペレーターの意見を集めるための「コールセンターへのヒアリング」の方法については、下記記事で準備から当日の流れまで詳しくまとめています。

参考:vol.04 センター行脚編

おわりに

VoCは宝の山です。つまり、お客様の声が集まるカスタマーサポートには、すでにお宝が集まっているとも言えます。この宝を生かすも殺すもカスタマーサポートにかかっているため、VoCの活用方法を見直してみてはいかがでしょうか?

下記記事では、SNSを使ったVoC活用について解説しているので、あわせてご覧ください。

Chapter
3

CS担当者が知っておきたい基礎知識

36

サポート基礎No.06 CXの基本【重要性とCX向上に欠かせない考え方】

#CX
#エフォートレス

CXとは、顧客が企業との関わり合いを通して得る体験のことです。このCXを高められれば、多くのお客様に自社の製品・サービスを選んでもらえ、リピートしてもらいやすくなります。では、CXを高めるためにはどうすればいいか?まずは「カスタマージャーニーマップ作成」や「ユーザーテスト」を通し、お客様の行動を把握することが大切です。

「CX」や「CXデザイン」という言葉を見聞きしたことはありませんか?

これらの概念は、カスタマーサポートが顧客満足度を高めるために欠かせません。

しかし、

  • UXなどの似た言葉との違いがよくわからない
  • 結局、何をすればいいかはわからない

という人もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、CX基礎と題して、CXの概要や重要性、CX向上のために必要な考え方をまとめました。カスタマーサポートとして働くすべての人が押さえておきたい内容なので、ぜひ最後までご覧ください。

前提:そもそもCXとは?UXとの違い

CXと似ている用語にUXがあります。まずは両者がどのように違うか、それぞれの意味を押さえておきましょう。

CX(Customer Experience)は、顧客が企業との全体的な関わり合いを通して得る価値のことです。日本語では「顧客体験」や「顧客体験価値」と訳します。

一方で、UX(User Experience)は、特定の製品やサービスを使用する際のユーザーの体験のことです。日本語では「ユーザー体験」と訳します。

…こういった辞書的な説明ではわかりにくいですよね。

では、違いはなにか。

両者の違いは、企業と顧客が接している「タイミング」です。CXが製品やサービスの利用前後も含むすべての体験を指しているのに対し、UXは製品やサービスを使っているときの体験だけを指しています

具体例として、ディズニーランドのCXとUXを見ていきましょう。

【ディズニーランドにおけるCXとUXの違い】

  • CX:ウェブサイトでのチケット購入から、園内でのアトラクション、レストランでの食事、ショップの利用、さらには退園後の思い出に至るまでの全体を通して得られた体験
  • UX:各アトラクションやスマートフォンアプリなど、特定のサービスを利用する際に得られた体験

本記事では、利用前から利用後までを通した体験である「CX」について、重要性や高める方法を紹介します。

なぜCXが重要なのか?

CXが重要な理由のひとつとして、「品質だけでは選ばれにくくなったこと」が挙げられます。

今や、品質が良いのは当たり前です。高品質な製品やサービスが多く、品質で差別化するのは難しくなっています。

このような時代に自社の製品やサービスを選んでもらい、そしてリピートしてもらうためには何が必要なのか?

それが、選びやすさやサポートといった「購入前後の体験」を含めたCXというわけです。

例えば、値段がやや高くても、お客様が購入後に満足することをわかっていれば、選んでもらいやすいと思いませんか?また、何か不具合やトラブルが発生しても、素早く寄り添った対応をしてくると、また選んでもらえる確率が上がりそうですよね。

ディズニーランドはCXが高いからこそ、

  • 何度も来てもらえる
  • 競合他社より高くても来てもらえる
  • SNSで発信してもらえる

というお客様の行動につながっていると言えます。

CXを高めるためには?

CXを高めるための考え方として「CXデザイン」があります。

CXデザインとは、「CXの最大化を目的にしてすべての体験を設計するプロセス」のことです。

【CXデザインで考えることの例】

  • 検討中にはこういうサービスが必要
  • 購入時にはこんなサービスが必要
  • 購入後にはこんなサポートが必要など

ここで一度、話をカスタマーサポートに移します。

カスタマーサポートが目指すべきは「お客様の不満が発生しない状態」です。

もちろん、お客様に満足してもらうのが理想ですが、現実はお客様が抱える問題や不満を解消できないこともありますよね。

そういったケースでも、お客様に寄り添った丁寧な対応をすれば、お客様が新たに不満を持ち、怒りを覚えて企業を嫌いになることを避けられます。お客様の課題は解決できていないのに、満足を上げられる可能性もゼロではありません。

この「お客様の不満が発生しない状態」を目指すためには、エフォートレスな(お客様に努力させない)サービス設計が必要です。

そして、このエフォートレスなサービス設計こそが、カスタマーサポートにおけるCXデザインというわけです。

では、CXデザインのために何をすればいいのか?

ここからは、CXデザインのために必要な「カスタマージャーニー」と「ユーザーテスト」について紹介します。

「カスタマージャーニー」でお客様の行動と感情を知る

カスタマージャーニーとは、お客様が商品やサービスを知ってから、その商品やサービスを購入し使い続けるまでのプロセスのことです。

お客様は商品やサービスを知ってから、検討・購入し使い続けるまでにさまざまなことを体験します。お客様目線でサービスを設計するためには、お客様が各フェーズ(検討時や購入時など)でどんなことを体験するかを把握することが欠かせません。

そこで、サービスを設計する際は「カスタマージャーニーマップ」を作成するのがおすすめです。

カスタマージャーニーマップとは、お客様がどんな体験をして、どんな感情を持つかを可視化して表現したものを指します。

▲カスタマージャーニーマップの例

このカスタマージャーニーマップをもとにして「このフェーズではこういうサービス・サポートが必要なのでは?」という仮説を立てながら設計していくことが、まさにCXデザインです。

カスタマージャーニーマップの作り方や、作成したマップを使った改善点の探し方は、下記の記事で詳しく紹介しています。

>>vol.13 カスタマージャーニーマップの作り方 

ユーザーテストも実施し幅広いお客様の行動を知る

カスタマージャーニーマップを作ったあとは、ユーザーテスト(UT)の実施をおすすめします。

カスタマージャーニーマップは「こういうフェーズに来たお客様は、一様にこういう行動をとって、こういう感情を持つよね」と想定して描いたものです。そのため、カスタマージャーニーマップとは別の行動を取ったり、別の感情を持ったりするお客様もいるはずですよね。

CXを高めるためには、「想定していない行動に出たお客様」も不満にならないサービス設計を考えなければなりません

そこで実施したい施策のひとつがユーザーテストです。

ユーザーテストでは、購入する商品が決まっているお客様を呼び「店舗に訪れてから購入するまでの行動」や「ECサイトを使って購入する際の行動」を実践してもらいます。実際のお客様の行動を観察すると、まったく想定していなかったお客様の行動を目の当たりにすることが多いです。

ちなみに、Webだと大々的なユーザーテストを実施しなくても、ツールを使うことでお客様の行動を把握できます。

ユーザーテストを実施するには、

  • お客様を呼ぶ
  • 機材を用意する
  • 場所を手配する

などの準備が必要です。準備には時間だけでなく、費用もかかります。

一方で、例えば「KARTE Live」のようなツールを使えば、お客様のWeb上での動きをリアルタイムで確認できます。また、録画して後から見直すことも可能です。

ツールを使えば、お客様の行動をいつでも手軽に観察できます。

カスタマージャーニーマップ作成やユーザーテストを実施して得られた情報をもとに、お客様が満足するためのサポートを考えていくことで、CXの向上につながるというわけです。

具体的なCXデザインの構築については、別の記事でご紹介します。

参考:CXデザインには"セグメントコミュニケーション"が有効

CXデザインを考えるときに大切なのが、「お客様とどのようにコミュニケーションを取っていくか」です。

そもそも、お客様とのコミュニケーション方法は大きく3つに分けられます。

  • 1to1コミュニケーション:1対1で情報を伝達する
  • セグメントコミュニケーション:ある程度の属性に分けて情報を伝達する
  • マスコミュニケーション:不特定多数の人へ一度に情報を伝達する

理想は、一人一人のお客様に合わせてCXデザインを考えること(=1to1コミュニケーション)です。しかし、一人一人に合わせていては、時間とお金がいくらあっても足りません。

とはいえ、全体を一括りにしたマスコミュニケーションではアバウトすぎます。例えば、新規のお客様とリピーターのお客様に対して、同じように自社の製品を紹介するようなものです。リピーターのお客様にしてみれば、「その説明は何度も聞いている」とマイナスの感情が生まれてしまいますよね。

そこで、CXデザインのために取り入れたいのが「セグメントコミュニケーション」です。セグメントコミュニケーションでは、お客様を属性で分けて接します。

【属性の例】

  • 入会日
  • 地域
  • 年齢
  • プラン
  • 購入経験の有無

セグメントコミュニケーションの強みは、企業にとってはある程度効率的に効果の高いアプローチができ、お客様にとっては自分に関係する情報だけを得られることです。

分けた属性ごとにCXデザインを考えることで、CXを効率的に高められます。どのようにセグメントを分ければいいかは、別の記事で解説する予定です。

おわりに

お客様に自社の商品やサービスを長く使ってもらうためには、CXデザインが欠かせません。まずは、カスタマージャーニーマップ作成やユーザーテストを通して、お客様の行動や感情を把握しましょう。

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